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2014年6月17日(火)

主張

武力行使の新要件

破綻明瞭な「高村私案」許すな

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 安倍晋三首相が異様な執念を燃やす集団的自衛権の行使容認に向け、自民・公明の与党による密室協議が、国会を蚊帳の外に置き、国民不在のまま加速しています。自民党の高村正彦副総裁は先週末、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更の閣議決定のため、自衛権発動の新たな要件を「たたき台」(高村私案)として与党協議の場に示しました。閣議決定の「核心部分」とされる「たたき台」は、日本を「海外で戦争する国」にする危険な狙いをさらに鮮明にしています。閣議決定への暴走はきっぱりやめるべきです。

「おそれ」は「無限定」に

 歴代内閣は、戦争を放棄し、戦力の保持を禁じた憲法9条の下で許される自衛権の発動は、日本に対する急迫不正の侵害、日本への武力攻撃が発生したことを要件にしてきました。日本は自国に対する武力攻撃に対抗する個別的自衛権しか発動できないということです。一方で、集団的自衛権の発動とは、他国への武力攻撃を阻止するため日本が武力を行使することを内容としており、9条の下では許されないとしてきました。こうした憲法解釈は自衛隊創設の1954年以来、今日までただの一度も変更されていません。

 「たたき台」は、半世紀以上もの国会での議論を通じ定着してきた憲法解釈を根底から覆す極めて重大な内容となっています。

 「たたき台」は、武力行使(自衛権発動)の要件に「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」を挙げました。日本への武力攻撃だけでなく、「他国に対する武力攻撃が発生」した場合を加えたことは、集団的自衛権の行使容認に踏み込む大転換です。

 集団的自衛権を行使する事態は、72年に政府が示した見解をもとに、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある」場合としています。高村氏は「一定の歯止めになる」と述べていますが、とんでもないことです。国民の権利が根底から覆される「おそれ」があると判断するのは時の政府であり、恣(し)意(い)的解釈が可能です。

 米国のイラク侵略戦争やアフガニスタン報復戦争当時であれば、「イラクの大量破壊兵器の保有」や「9・11同時多発テロ」を口実に「日本国民の権利が根底から覆されるおそれがある」といって参戦も可能になりかねません。「歯止め」どころか、自衛隊派兵は「無限定」に広がります。

 72年見解はもともと、憲法上許される武力の行使は「外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処」するためで、集団的自衛権の行使は許されないというのが結論です。それを無理やりねじまげて行使容認の根拠にするのは牽強(けんきょう)付会というほかありません。

牽強付会に他ならない

 集団的自衛権の行使容認を解釈改憲で強行する道理のなさを示すだけです。高村氏が以前、59年の砂川事件最高裁判決を援用しようとし、今は持ち出せなくなって破綻したのと同じです。憲法9条を、破綻した理屈に基づき、一片の閣議決定で正反対の代物に変えることは絶対に許されません。


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