2014年6月11日(水)
主張
「子ども減少社会」
希望奪う大本の転換こそ必要
昨年日本で生まれた赤ちゃんは102万9800人となり、2年連続で過去最少を更新しました。合計特殊出生率(女性1人が生涯で産む子ども数の推計値)は1・43へ微増したものの、現在の人口を維持できる水準2・07には及ばず、少子化の流れに歯止めがかかりません。結婚件数も戦後最少の66万594組でした。結婚・出産がきわめて困難な国のままでいいはずがありません。政治は、子育てが安心してできる社会への転換に真剣に力を注ぐときです。
痛切な声にこたえぬまま
欲しい子どもの人数は2人が53・8%、3人が26・9%―。内閣府が3月に公表した既婚者(20〜49歳)の意識調査です。未婚者への調査では「結婚したい」と7割以上が回答しています。国民の希望は、はっきりしています。
問題はそれを妨げている現実です。結婚を決心する状況として挙げた回答のトップは「経済的な余裕」でした。子どもを持つ場合の条件の問いには、「子育てできる職場環境」との答えが1位で、「教育にお金があまりかからない」がそれに続きました。当然すぎる願いです。この国民の意識は、歴代政府が「少子化対策」を掲げ始めた約20年前からほとんど変わっていません。若者や子育て世代の痛切な声に政治や社会が正面からこたえず、むしろ深刻化しているところに事態の根深さがあるのです。
非正規雇用は増加を続け、いまや若者の2人に1人です。一生懸命働いても生活は不安定で低賃金におかれています。正規雇用になっても、異常な長時間労働を強いられています。若者を文字通り使い捨てる「ブラック企業」がまん延しています。社会人になると同時に「奨学金返済」の借金を負わされます。
出産前後に半数以上の女性が仕事をやめる現実が続いています。保育所不足が「保活」の激化に拍車をかけています。
今月政府がまとめた「子ども・若者白書」の7カ国比較調査では、「早く結婚して家族を持ちたい」と願う日本の若者(13〜29歳)は45・8%と、欧米諸国より高いのに、「40歳になったときのイメージ」についての問いで「結婚している」「子どもを育てている」と答えた割合は最低に転落しました。「自分の将来に希望がある」と答えた日本の若者が6割台にとどまり欧米諸国の8〜9割を大きく下回った結果は、日本の若者をとりまく現実が、世界でも過酷なことを浮き彫りにしています。
若者をこれほど粗末に扱い、余裕のない暮らしに追い込み、結婚・子育てに希望をもてない事態を生み出した「雇用破壊」「構造改革」などをすすめてきた歴代政権の責任がきびしく問われます。
願いに逆らう安倍政権
安倍晋三政権は今月閣議決定する「骨太の方針」「成長戦略」に「少子化対策」「人口減克服」などを掲げる予定ですが、「成長戦略」の柱は、若者にさらに犠牲を強いる「雇用破壊」の加速という逆行そのものです。「少子化」「人口減少」を“脅し文句”に不安をあおり、消費税増税・社会保障破壊などの悪政を国民におしつけるやり方に大義も道理もありません。
国民の願いに逆らう政治をやめさせ、若者・子育て世代が未来への展望を持ち、安心できる政治・社会へ踏み出すことが急務です。