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2014年6月2日(月)

2014とくほう・特報

「国民の命守る」どころか「若者の血を流す」

自衛隊が「戦地」へ鮮明に

志位質問で集団的自衛権の本質明らかに――記者座談会

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 安倍晋三首相が5月15日の記者会見で集団的自衛権の「限定的行使」を検討する考えを表明したのを受け、28日の衆院予算委、29日の参院外交防衛委で集中審議が行われました。何が浮き彫りになったのか。担当記者で話し合いました。


「非戦闘地域」の歯止め外せば後方支援でも犠牲者が

写真

(写真)旧テロ特措法、イラク特措法の2条2、3項を示し、質問する志位和夫委員長=5月28日、衆院予算委

  衆参を通じて、もっとも印象的だったのは。

  28日の日本共産党の志位和夫委員長の質疑だ。「限定的」というけれど、いったん集団的自衛権の行使を容認したら、(1)武力行使はしない(2)戦闘地域に行かない―という海外派兵の“二つの歯止め”はなくなる、と繰り返し追及した。

  首相は海外の戦争に「武力行使を目的として参加しない」というけど、最後まで「武力行使はしない」と言わなかった。さらに重大なのは、「戦闘地域」に行くこともありうるとの考えを示したことだ。

  これまでの海外派兵法では、他国の武力行使への参加(一体化)を避けるために、自衛隊は海外派兵をした場合でも、「非戦闘地域」での活動に限定していたね。

  政府内では、自衛隊が「戦闘地域」で米軍のために医療や輸送、補給といった後方支援を可能にすることが検討されている。「野戦病院」に言及する声まで出ている。首相の答弁は、そうした検討を踏まえたものだ。

  たとえ後方支援でも、「戦闘地域」で活動したらどうなるか。志位氏は、アフガンに派兵したNATO(北大西洋条約機構)軍は後方支援が主だったにもかかわらず、「戦闘地域」で活動したために、21カ国1031人もの死者を出したと追及した。

  首相は、自衛隊がアフガニスタンでのような戦争で「戦闘地域」で活動しても、「武力行使を目的にしていない」から、NATO軍のようにならない、と言いたかったのだろう。この論拠を崩されて、首相は動揺し、目が泳いでいたね。

  自衛隊に銃撃戦を行う意思がなくても、いったん「戦闘地域」に入れば、いつ、敵対勢力との交戦状態に陥ってもおかしくない。アフガンでのNATO軍がその実例だ。

  「戦闘地域」への派兵を求められれば、自衛隊は重武装や交戦規則(ROE)の緩和を求めてくるだろう。そうなれば、「殺し殺される」泥沼にはまりこんでしまう。

  一連の海外派兵法では、2条2項で武力行使をしない、3項で戦闘地域に行かないとなっている。政府が与党協議で示した「事例集」では、3項だけが関連条文にあげられている。これだけ改正しようと考えているようだが、3項がなくなれば、2項が残っても、2項の意味はほとんどなくなってしまうということだね。

  首相は15日の記者会見で、「国民の命と平和な暮らしを守る」と繰り返し言っていたけど、実際は“日本の若者を戦地に送り、血を流させる”ということだ。こんなことは絶対、許されない。

国民が慣れたその先には武力行使目的の活動参加

  そもそも「武力行使を目的に参加しない」というのは、どういうことなのだろう。

  首相の私的諮問機関である安保法制懇の北岡伸一座長代理は、昨年9月の第2回会合で、「自衛隊は実戦経験がないため、攻撃部分に参加しろと言われてもすぐにできるものでなく、当面は輸送、後方支援が中心になる」と言っている。

  つまり、「当面は」ということだね。自衛隊が敵の殺傷能力を高め、海外で隊員が戦死することに、国民が慣れれば、その先は「武力行使を目的とした活動」への参加もありうると。

  確かに今、自衛隊が最前線に投入されても、米軍の足手まといになるだけだし、ニーズもないだろう。しかし、日米共同演習では年々、戦闘訓練の水準を上げている。

  陸上自衛隊の元幹部は、「米軍から集団的自衛権の行使を求められたことはないが、多国籍軍への参加を何度も促された」と言っている。ここが狙い目だ。自民党の石破茂幹事長も、将来的な多国籍軍参加の可能性に言及している。

  いずれにせよ、いったん集団的自衛権の行使に踏み切れば、憲法上の歯止めはなくなってしまう。集団的自衛権は海外で他国のために武力行使する権利のことだ。これを認めておいて、一方で「武力行使を目的にしない」「他国の武力行使と一体化しない」といっても、それは「政策上」の歯止めであり、政権が代われば、いつでも変更できるようになりかねない。

日本人乗らぬ米艦も防護、中東の機雷掃海にも言及

  他党の質疑では、どんなことが明らかになったか。

  波紋を呼んだのは、首相が「邦人を乗せていない米艦防護」に言及したことだ。

  首相は記者会見で、日本人の母子が乗った米輸送艦を防護することを示したイラストを掲げて、「おじいちゃん、おばあさん、お孫さん」と情緒的な訴えを繰り返した。あれはいったい、何だったのか、と疑わしく思う声が相次いだね。

  「ホルムズ海峡での機雷掃海」にも言及した。中東からの石油が途絶えたら、国民生活はどうなるのか、と。こんな理屈で自衛隊の派兵が可能なら、ほとんど戦前の侵略戦争の口実になった「満(まん)蒙(もう)生命線」論と変わらないね。

  従来の政府見解では、機雷除去は武力行使の一環だとしている。しかし、首相は、“これぐらいたいしたことはない”といわんばかりの答弁を繰り返していた。

  安倍政権が、「必要最小限度」「集団的自衛権の限定的行使」でできることとして考えている中心点は、米艦防護と機雷除去だろう。相手に直接、打撃を与えるわけではないからいいじゃないか、という考えが透けて見える。加えて、PKO(国連平和維持活動)での「駆け付け警護」などがあるだろう。

  「戦闘地域」での後方支援は、今後、与党協議でも議題になる。「限定的に行使する」という、安倍首相の欺まんを徹底的に暴いていかなければいけないね。


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