2014年5月26日(月)
主張
集団的自衛権
他国に「攻め込む」のが実態だ
安倍晋三首相は、歴代内閣が「集団的自衛権の行使は許されない」としてきた憲法解釈を変える解釈改憲の動きを強めています。戦後の安全保障政策の大転換に向け、自民党は公明党との協議を始めています。「集団的自衛権」には「自衛」という言葉が付いているため、「日本を守る」というイメージも強く、安倍首相も「国民の命を守る」と繰り返します。これは、「集団的自衛権」の危険な姿を隠す重大なごまかしです。
「自衛」とは違う考え
「集団的自衛権」について定めているのは国連憲章です。国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、加盟各国には「個別的自衛権」とともに「集団的自衛権」があるとしています。
「個別的自衛権」とは、武力攻撃を受けた国が自分の国を守るため、これを排除する権利です。これに対し、自分の国は武力攻撃を受けていないのに、外国に加えられた武力攻撃を阻止する権利が「集団的自衛権」とされます。どちらにも「自衛」という言葉がありますが、「自国防衛」を意味するのが「個別的自衛権」であり、「他国防衛」を建前とするのが「集団的自衛権」です。
「集団的自衛権」の発動とは、武力攻撃を受けた外国を守るため、自国の軍隊を海外に派遣し、武力攻撃を仕掛けた国と交戦することです。日本が「集団的自衛権」を行使できるようになれば、自衛隊は「海外で戦争する軍隊」になってしまいます。戦争放棄、戦力不保持を定めた憲法9条をどう解釈しても認められません。
さらに重大なのは、戦後の歴史を見ると、「集団的自衛権」が「他国防衛」のために発動された例はほとんどなく、大部分が「他国侵略」の口実になってきたことです。アメリカによるベトナム、レバノン、ニカラグア、グレナダへの侵略や軍事介入▽同じく旧ソ連によるハンガリー、チェコスロバキア、アフガニスタンへの侵略・介入▽イギリスのヨルダン、イエメン介入▽フランスのチャド介入―などです。
これらは、アメリカや旧ソ連などが自分たちの勢力圏を維持するため、そこから抜け出そうとする自主的な国が生まれたり、勢力圏下にある国のかいらい政権が反政府勢力によって倒されそうになったりした時、その国に攻め込んだりした例です。「集団的自衛権」はもともと、そうした狙いをもってアメリカが主導して国連憲章に押し込んだのです。
「集団的自衛権」の行使容認派は「中小国がお互いを守るため」と宣伝していますが、実際は中小国を守るどころか、逆に、大国が中小国に攻め込むことを正当化するものです。
範囲いくらでも拡大
日本が「集団的自衛権」の行使を認めれば、「集団的自衛権」を口実に、外国に攻め込むアメリカと一緒になってその国に攻め込むことができるようになります。
安倍首相は、「集団的自衛権」の行使は「日本の安全に重大な影響が及ぶ」場合に限るといいます。しかし、その判断基準は非常にあいまいで、政府の解釈次第で行使の範囲はいくらでも広げられます。外国に攻め込むという本質を押し隠す安倍首相の姿勢は許されません。「集団的自衛権ノー」の世論と運動を広げる時です。