2014年5月20日(火)
主張
石破幹事長発言
「戦争をする」本音は隠せない
本音は隠しようがないということでしょう。
自民党の石破茂幹事長が17、18日のテレビ番組で、武力行使を伴う多国籍軍への将来的な自衛隊参加に言及したことです。「日本だけが(多国籍軍に)参加しないというのは、国民の意識が何年かたって変わった時、変わるかもしれない」などと明言しました。
多国籍軍参加は必然
安倍晋三首相が集団的自衛権の憲法解釈見直しの検討を表明した記者会見(15日)で「自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加することはこれからも決してない」と公言した直後、それを覆すに等しい発言です。
石破氏の発言は、安倍首相の記者会見が国民に対する欺瞞(ぎまん)であったことを改めて証明しました。同時に、集団的自衛権の行使をいったん認めれば、際限のない海外での武力行使に道を開く危険をあらわにしました。
際限のない海外での武力行使の危険は、集団的自衛権を認める理屈の上からも、実態の上からも必然的です。
集団的自衛権とは、日本が武力攻撃を受けていないのに、「他国防衛」を理由に海外での武力行使を認めるものです。集団的自衛権の行使を認めるということは、海外での武力行使を禁じた憲法上の歯止めを外すことです。
首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の報告書は、集団的自衛権の行使について「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある」場合を発動要件にしています。そうした場合に該当するかどうかの判断基準としては「日米同盟の信頼が著しく傷つきその抑止力が大きく損なわれ得るか」を挙げています。
「日米同盟の信頼関係を壊さないため」というのは、2003年のイラク侵略戦争を受けて日本政府が強行した自衛隊派兵の最大の口実でした。
イラク侵略戦争は、「国連安保理決議に基づく多国籍軍」と偽った米軍中心の有志連合軍によって強行されました。この時は、自衛隊の派兵には「武力の行使はしない」「戦闘地域では活動しない」という歯止めがかかっていました。しかし、集団的自衛権の行使を容認すればこの歯止めはなくなります。
「日米同盟のため」といえば首相が参加を否定したイラク戦争型の「多国籍軍」にも参加が可能になる危険があります。実際、安保法制懇の柳井俊二座長(元駐米大使)は「首相が『武力行使を伴う集団安全保障措置に参加しない』というのは政策的判断であって、憲法上の制約の問題ではない」と語っています(「朝日」18日付)。
実態的に撤退不可能
1991年の湾岸戦争では、米国などがクウェートに対する集団的自衛権を行使しようとし、その後、国連安保理決議によって多国籍軍が編成されました。集団的自衛権を行使した場合、それが多国籍軍という集団安全保障措置に変われば撤退するということは実態的にも不可能なことです。
「日米同盟のため」という口実を錦の御旗に日本が「海外で戦争する国」になる危険はいよいよ明らかです。国民を欺く首相のたくらみを断念させるため、いっそうの運動が求められます。