2014年5月13日(火)
主張
3月期決算大詰め
大企業の独り勝ち許されない
大企業の3月期決算の発表がピークを迎えています。自動車や電気機器の大企業を中心に、売り上げも利益も大幅に伸ばした大企業が多く、「世界でもっとも企業が活躍できる国」を掲げた安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」のもとで、大企業が増収・増益を謳歌(おうか)していることを浮き彫りにしています。大企業の大もうけの一方、労働者の賃金は一部で賃上げの動きも見られるものの消費税の上げ幅にさえ届かない低さで、中小企業は下請け単価の切り下げなどのしわ寄せを抜け出せていません。
相次ぐ最高益の更新
「トヨタ6期ぶり最高益」「ソフトバンク最高益」「パナソニック16%増益」―連日のように経済新聞をにぎわす、大企業の3月期決算の発表です。トヨタ自動車の場合、3月まで1年間の売り上げは25兆6919億円と1年前より16・4%も増え、営業利益は2兆2921億円と73・5%も増えています。株主への配当などに回る純利益でも1兆8231億円と89・5%も増え、6期ぶりに過去最高を更新しました。
2008年の「リーマン・ショック」後、世界的な金融危機の中で一時は赤字に転落したトヨタが大幅にもうけを増やすことができたのは、世界的な景気回復で売り上げが増えたほか、「合理化」で労働者や下請けに犠牲を転嫁してきたからです。豊田章男社長も「グループ一丸となった原価改善活動」の成果であることを隠しません。加えて昨年は「アベノミクス」による金融緩和が円安を招き、輸出で売り上げが増加しました。
3月期決算では、トヨタだけでなく、自動車、電機など輸出型の大企業が軒並み増収増益となっているのが目立ち、「アベノミクス」のもとでの急速な円安が大企業をうるおしていることを浮き彫りにしています。円安で原油など輸入原材料の価格が上昇した大企業も値上げで負担を転嫁しており、国民の多くがガソリンや食料品の値上がりに苦しみ、消費税増税との“ダブルパンチ”を被っているのとは対照的です。
大企業が生産を増やし、もうけをあげることができるのは、労働者が働き、下請けの中小企業が支えているからです。そうした労働者や下請けに負担を押し付けたうえ、政府の大企業本位の政策がもたらした円安などの“恩恵”まで丸抱えするのは本末転倒です。大企業がもうけを増やしながら、「内部留保」をため込むだけで労働者の賃金も下請けの単価も圧迫したことが経済のひずみを激しくしてきました。記録的な好決算が相次ぐなかで、大企業だけが独り勝ちを続けるのは許されません。
もうけを賃上げに回せ
さすがに安倍政権もことしの春闘にあたっては大企業に賃上げを要請しましたが、それは「経済の好循環」の名で、まず大企業のもうけを増やせば賃上げにも回るというだけのものでした。実際、春闘での賃上げは、先週末までの連合の集計でも定期昇給を含めた平均賃金で2・11%、消費税増税分の3%にさえ達せず、中小の労働組合の場合は1・84%です。
厚生労働省の毎月勤労統計調査でも労働者の賃金は下がり続けています。大企業にもうけを独り占めさせず、賃金と下請け単価を改善させることこそ、経済のまともな再生にとって不可欠です。