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2014年4月30日(水)

主張

リニア環境評価書

不安と懸念は高まるばかりだ

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 リニア中央新幹線の2027年開業をめざすJR東海が、国土交通省に環境影響評価書を提出し、今年秋の着工をにらみ準備を加速しています。国民的議論がないまま計画を推進するJR東海の姿勢は、あまりに前のめりです。環境影響評価書にも、関係自治体から「意見を反映する気があるのか」など批判が出ています。総事業費9兆円超を投じ、東京―大阪をほぼ地下でつなぐ前例なき大型事業は、そもそも無謀です。日本の将来にもかかわる巨大開発を、国民を置き去りにしたまま推進することは許されません。

住民や自治体は置き去り

 リニア中央新幹線は、27年に東京―名古屋でまず開業し、45年には大阪まで延伸する計画です。

 「新幹線」といってもレール上を車輪で走る現在の新幹線とリニアは、まったく異なります。超電導磁石の力で車体を浮かせ、軌道上わずか10センチを最高時速500キロの猛スピードで走る構想です。東京―名古屋間の86%は地下トンネル区間です。「トンネル内を飛ぶ飛行機」という研究者もいますが、運転士はおかないため安全への不安や懸念は払拭(ふっしょく)されていません。

 3千メートル級の山々がつらなる南アルプスの直下を20キロ超のトンネルで貫く計画に、自然環境や地下水への影響、掘り出した土の処理方法など無数の問題があるとして、地元だけでなく自然保護団体から強い反対が出されています。沿線の7都県(東京、神奈川、山梨、長野、静岡、岐阜、愛知)各地で開かれた説明会でも、騒音や振動、緊急時の避難路、電磁波の不安などについて多くの疑問が出されましたが、JR東海側の説明は通り一遍で終わっていました。

 23日に国交省に提出したJR東海の環境影響評価書は、昨年9月に公表した「環境影響評価準備書」にたいして周辺自治体から出された意見や疑問にたいする回答や対応策などを盛り込んだとしています。

 沿線都県の意見書がすべてJR東海に出されたのは先月24日です。通常数カ月かかる評価書をわずか1カ月のスピードでまとめたことは、きわめて異例です。100にのぼる意見や質問を出した自治体もあるのに、まともな検討がされたかどうかは、はなはだ疑問です。

 評価書では、準備書より詳しい部分もあるものの、「生活圏や地域文化への影響を最小限にするよう努める」という抽象的な表現や、環境への影響を減らす自治体側からの提案を「開業予定を超える工期になる」と拒否するなど、JR東海側の主張の繰り返しばかりが目立ちます。着工の「お墨付き」にならないことは明らかです。

 総事業費をJR東海がもつからといって、一企業で独走することは許されません。JR東海社長も「ペイしない」といった事業の採算性はどうなのか。一度導入を検討したドイツが結局撤退したが、技術的に本当に確立しているのか。

 国会などをはじめ国民の立場からの徹底的な検証こそ必要です。

将来に禍根を残さず

 東京五輪や国土強靱(きょうじん)化などにかこつけて自民党内で、名古屋・大阪の同時開業や国の財政支援要求などを求める声が出ていることは、異常です。国土を荒廃させかねないリニア計画は中止し、巨大開発事業頼みの政策から脱却することが、未来への責任です。


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