2014年3月17日(月)
森林・草原急減、食料安保に暗雲
アジア・太平洋地域 国連機関警告「各国対応を」
アジア・太平洋地域の森林や草原が急速に消滅し、地域の農業の発展と食料の安全保障に大きく影響しかねない―国連食糧農業機関(FAO)は10〜14日、モンゴルの首都ウランバートルで開いた同地域の総会でこう指摘し、森林や草原の保全が農業の根幹を支え、気候変動を緩和するとして各国に対応を求めました。
(島崎桂)
ロイター通信によると、会議に参加したFAOの上級林業担当官、パトリック・ダースト氏は、同地域における森林と草原の減少傾向にふれ「われわれはすでに極めて否定的な影響を受けている」「森林と草原の回復は、生態系に由来する環境、社会、経済的利益をもたらす」と強調。事態打開に向け▽強固な政治的意思▽国内法の強化▽能力育成―などが必要だと訴えました。
FAOによると、同地域の陸地面積に占める森林や草原の割合は約57%。水資源の確保や気候の調整で農業を支えるとともに、「炭素隔離(二酸化炭素の吸収など)を通じて気候変動を緩和する強大な潜在力を有する」としています。
しかし砂漠化や都市化で、同地域の草原は年2万平方キロ(四国よりやや広い程度)の割合で減少。世界自然保護基金(WWF)は、2009年までの35年間に、中国南西部の雲南省からミャンマーにまたがる大メコン圏の森林の3分の1が消失したと指摘しています。
総会ではこのほか、海面上昇で国土水没の危機にある南太平洋の島国への効果的な財政支援のあり方を議論。貧困と飢餓の撲滅については、家族経営など小規模農家を地域経済・社会の「不可欠な要素」と位置付け、生産性の向上に向けた行程表を採択しました。