2014年3月5日(水)
主張
NHK籾井会長
いつまで居座りを続けるのか
NHK会長に就任した籾井(もみい)勝人氏が1月末の就任会見で、日本軍「慰安婦」のような制度は「戦争しているどこの国にもあった」などと発言し、世論のきびしい批判をあびて1カ月あまりたちました。籾井氏は発言を取り消しましたが責任はとらず、それどころかその後もNHK経営委員会で「私は大変な失言をしたのでしょうか」と開き直るなど居座りを続けています。自らの暴言の自覚さえなく責任も取らない籾井氏に公共放送の責任者は務まりません。籾井氏と籾井氏を会長に選んだ経営委員会、その経営委員を任命した安倍晋三政権の責任は重大です。
放送のあり方にかかわる
就任記者会見での籾井氏の発言は、女性にたいする重大な人権侵害として国際的に批判されている日本軍「慰安婦」問題での事実に反する暴言だけでなく、「政府が右ということを左ということはできない」など、公共放送としてのNHKの存立に関わる重大なものです。NHKを代表する会長としての資質と良識が問われるだけでなく、放送の自主と自律、政治的公正・公平、事実を曲げないなど公共放送としてのNHKのあり方にもかかわる重大発言として、絶対に不問にできない発言です。
籾井会長が2月12日のNHK経営委員会で経営委員の一人からあらためて発言を批判され、「私は大変な失言をしたのでしょうか」などと開き直ったのは、まったくことの重大性をわきまえない言語道断なものです。籾井会長はそのつぎの経営委(2月28日)であらためて弁明に追い込まれましたが、経営委員長からも「ご自身の置かれた立場についての理解が不十分」と批判されるありさまです。籾井氏にもはやNHK会長にとどまる資格がないのは明白です。
籾井会長は国会答弁などで、「放送で信頼を回復していく」といいますが、「政府が右というものは左といえない」といった姿勢で、どうして視聴者・国民に真実を伝え、事実を曲げない放送ができるのか。最近もNHKはソチ・オリンピックに関連して浅田真央選手の転倒をなじった森喜朗元首相の発言を報道せず、週刊誌などで批判されていますが、籾井氏のこうした姿勢では信頼回復とは程遠い限りです。
籾井会長が就任直後、NHKの理事10人全員に日付を書かない「辞表」を提出させていたことも明らかになりました。就任会見でもNHKの「ボルトやナットを締めなおす」ことを公言したのが籾井氏でしたが、理事をはじめNHK内部を「辞表」で脅し、恐怖で支配しようとしても放送はよくなりません。そうしたこともわからない籾井氏にはいよいよ報道機関の代表者の資格はありません。
国民のための公共放送に
籾井氏があくまで会長に居座り続けるなら、任命した経営委員会が罷免すべきです。ところがその経営委員会でも、安倍政権になってから新たに任命された委員から南京大虐殺や東京裁判を否定し、男女共同参画を批判し、NHKの「公正」や「不偏不党」の原則を疑わせるような発言があいついで明るみに出ました。よりにもよってこうした人物を経営委員に任命した首相の責任は重大です。
国民のための公共放送を取り戻すためには、籾井氏はもちろん経営委員会や安倍首相の責任をあいまいにしないことが不可欠です。