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2014年1月19日(日)

自衛艦衝突 海自OBが指摘

「航海保安」解除なら見張り不十分

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 「釣り船追い越しの失敗と見張り不十分」―。海上自衛隊の大型輸送艦「おおすみ」(8900トン、田中久行艦長)が広島沖で釣り船「とびうお」に衝突、船長と釣り客の2人が死亡した事件。衝突現場など瀬戸内海での航海体験をもち、護衛艦の指導教官も務めたベテランの元海上自衛官に聞きました。(山本眞直)


 おおすみは15日午前6時30分ごろに呉基地を出港、岡山県の造船所に向かっていました。衝突したのが8時ごろ。元自衛官は「通常なら出港して40分くらいまでは航海保安についているが、衝突事故を起こしたころにはそれが解除されていたと思う」と指摘しました。

 航海保安とは―。狭い海域で大小の船舶が行き交い、慎重な操縦が求められるとの艦長の判断を受け、当直士官による「総員、航海保安につけ」との号令が発せられます。

全乗組員配置

 おおすみであれば、普段は無人の上甲板の左右にそれぞれ複数の見張り要員が立ち、後部にも連絡要員と幹部が配置につくのをはじめ、調理要員を除く全乗組員がそれぞれの配置につくなど「戦闘配置に近い状態、文字通りの総員配置」になるといいます。

 「狭い湾口から広い航路帯に入り、航海保安が解除された状態で航海していたはず。じつは、この解除後が一番、海難事故を起こしやすい。自分も瀬戸内でタンカーと衝突事故を経験している」と“告白”する元自衛官。

 航海保安が解除されるとブリッジ(艦橋)以外の見張り要員は元の部署にもどり、それまで張り詰めていた気分が緩むといいます。

 とびうおが速度の遅い、おおすみを追い越した後、おおすみが右に旋回、その後、加速して左に針路を変更したとき衝突したとの報道に対し、元自衛官はこう指摘します。

 「おおすみは自船を追い越したとびうおの存在はわかっていたはず。しかし、前方を横切る他船の回避で右に旋回したため、決まった航路にもどす必要から艦長の許可をとって加速して左に変更した。そのときとびうおの位置を把握していなかった可能性がある」

左おろそかに

 救助されたとびうおの釣り客は「おおすみが左後方から接近してきた」と証言しています。おおすみのブリッジは右側にあり、見張りも「右、見張り、左、警戒」となり、左はどうしてもおろそかになりがち、といいます。

 元自衛官は、「おおすみがとびうおの存在を把握していたら、左旋回するときに、とびうおからの距離を十分にとった位置で追い越したはずだ」と指摘。「とびうおに気がついたときはあまりに接近しすぎて、警笛は、間に合わないことを承知で鳴らした、いわばアリバイとしかいえない」

 実際、釣り客は、おおすみが警笛を鳴らしたときはとびうおの右横、4〜5メートルに接近していたと証言しています。

 海上衝突予防法は、追い越しをかける船に回避義務があると定めています。


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