2014年1月17日(金)
釣り船衝突
また自衛艦 責任は
交通の難所 危険熟知のはず
問われる安全確認
海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」が釣り船に衝突し、2人が犠牲になるという惨事から一夜明けた16日、救助された釣り船客の証言などから浮かびあがったものは―。
海自輸送艦「おおすみ」による釣り船との衝突、船長ら2人の死亡事件は、事故状況の全容が明らかではないことを前提にしても、海自側の責任は厳しく問われなければなりません。
現場海域は全国でも有数の釣り船などプレジャーボートのレジャー拠点であり、大小の船舶がひんぱんに行き交う海上交通の難所です。「おおすみ」はこの海域を日常的に航行しており、その危険度の高さを熟知しているはずです。
釣り船客によれば、遅い速度で航行していた「おおすみ」を釣り船が追い越したあと、後方500メートル付近に「おおすみ」を確認したといいます。「おおすみ」はその後、右に旋回したあと今度は左に進路を変えて加速したといいます。
これが事実とすれば、「おおすみ」はなぜ加速したのか、この動作中の見張りなどの安全確認作業はきちっとされていたのか、が問われます。海上衝突予防法は、他船との回避行動については安全確認動作を強調しているからです。
海自はこの間、衝突・接触事故を繰りかえしています。
2008年2月、千葉県沖で海自イージス艦「あたご」が漁船に衝突、沈没させ父子2人を死亡させた事件は、東京湾入り口という海上交通の要所で、自動操舵(そうだ)で航行、見張りも規定に外れた不十分なもので、海難審判では「漁船の動向に注意せず漫然とした操縦だった」と処分されました。
「あたご」はアメリカでのイージスシステム(ミサイル)の認証試験からの帰国途中でした。公判での当時の艦長が口にした言葉が忘れられません。「漁船がよけてくれるだろうという思いが(当直士官にも)あったと思う」
今回、「おおすみ」は伊豆大島、フィリピンでの水害支援からの帰国直後で、安倍政権による「国防軍化」を視野に「離島防衛」用という口実で装備などの大幅改修に向けた造船所への移動途中でした。
「そこのけ自衛艦が通る」そのものの意識が厳しく問われています。(山本眞直)