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2013年12月17日(火)

秘密が招いた戦争の惨禍

歴史を偽る石破発言

真実覆い隠した「大本営発表」

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 秘密を報じれば国家の危機を招き、大勢の国民が死ぬ―。秘密保護法に関わって自民党の石破茂幹事長がこんな理屈で、「秘密」報道の抑制を説いています(別項)。“報道よりも国民の命が優先だ”といいたいのでしょうが、歴史に学ばない逆さまの議論です。(竹原東吾)

ねつ造で始まったベトナム戦争

 日本はかつて、政府の「秘密」が報じられないもとで、中国への侵略戦争、アメリカやイギリスをはじめ世界を相手にしたアジア・太平洋戦争を行い、日本で310万人以上、アジアで2000万人以上もの犠牲者を出しました。

真実は「秘密」

 この侵略戦争を指導した「大本営」の発表は、日本軍が大敗北しても勝利したかのようなウソを垂れ流し、退却も「転進」と言いかえるなど国民から真実を覆い隠しました。その発表は太平洋戦争の45カ月間で846回に及びます。真実は「秘密」にされ、厳しい報道管制のもとでおびただしい数の犠牲者を出したのです。

 真実が秘匿された結果、泥沼の戦争に陥って大勢が死んだのは日本だけではありません。アメリカのベトナム戦争やイラク戦争がそうです。

 ベトナム戦争の全面化につながった1964年の「トンキン湾事件」が米軍部のねつ造だったことは、ニューヨーク・タイムズ紙が暴露した米国防総省の機密報告文書―「ペンタゴン・ペーパーズ」で明らかになっています。

 文書を提供したダニエル・エルズバーグ氏(米国防省元職員)は「赤旗」の取材に「マクナマラ(元米国防長官)だったら、なんら法を犯す危険もなくペンタゴン・ペーパーズを発表できたし、戦争を終結できたはずです」(1995年5月2日付)と述べています。ベトナム戦争の犠牲者はベトナム人約300万人、米軍6万人近くに上ります。もしペンタゴン・ペーパーズの内容がもっと早く報じられていれば、どれだけ大勢の命が助かったか。

 イラク戦争もそうです。フセイン政権の大量破壊兵器の開発・保有疑惑を理由に国連安保理の承認なしに開戦しましたが、米国政府調査団の正式報告(2004年10月)によって、そうした事実はなかったことが明らかになっています。死者は民間人12万人以上といわれます。

 このとき日本は、米国の言い分をうのみにして戦争を支持。自衛隊を派兵し、米軍航空機材や武装米兵の空輸まで行っています。

報道統制進む

 政府はいまもイラク戦争を支持・派兵したことの検証をせず、誤りも認めていません。それどころか、「米国との情報共有はわが国の安全にとってきわめて有意義だ」(安倍首相)と言って、ますます米国の情報に依存し、その秘密を保護しようと躍起になっています。

 「大勢の人が死ぬ」戦争は、真実を覆い隠すことから始まります。石破氏の発言は、歴史をわきまえず、秘密を盾にした報道統制にまっしぐらに突き進む道です。


ペンタゴン・ペーパーズ 北ベトナムのトンキン湾で米駆逐艦が北ベトナムの魚雷艇から攻撃を受けたとされた事件(トンキン湾事件、1964年)が、当時のジョンソン政権によるねつ造だったことを示す秘密報告書。1971年にニューヨーク・タイムズ紙が米政府の強圧をはねのけて暴露しました。


「秘密報道で国が危機に」

石破幹事長の発言

 「報道することで、わが国の安全が危機にひんするということであれば、何らかの方法で抑制されることになる」「(秘密の)入手は罰せられない。しかし、(報道機関による)発表は罰せられる」(11日、日本記者クラブ)

 「『報道の自由』だということで報道する。でも『大勢の人が死にました』というと、どうなるのか」(12日、ラジオ番組)


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