2013年12月12日(木)
焦点
国家安保戦略・新防衛大綱・中期防
危険な安倍流満載 矛盾も
「今後の安全保障のありようを決定する歴史的な文書になる」
11日午前、安倍晋三首相は政府の「安全保障と防衛力に関する懇談会」の冒頭で、「国家安全保障戦略」(NSS)や防衛大綱、中期防衛力整備計画の概要を絶賛しました。
戦争できる国へ
初めて策定されるNSSは、地球規模で“殴りこみ”戦争を繰り広げてきた米国と、その最重要同盟国である英国、豪州などの戦略を参考にしています。第1次安倍政権期(2006〜07年)に実現できなかった、「米国と肩を並べて戦争できる国」づくりの一歩です。おおむね5〜10年ごとに見直される防衛大綱・中期防も、今後はNSSを指針とします。
NSSのキーワードは「積極的平和主義」です。具体的な内容は示されていませんが、首相が9月に国連総会などで行った演説では、憲法が禁じている集団的自衛権の行使や、「集団安全保障」=多国籍軍参加などを示唆しています。
武器輸出を禁じた「武器輸出三原則」撤廃の検討と併せ、憲法に基づく平和主義という「国家ブランド」を投げ捨てる考えです。
もう一つの特徴は、過剰な中国敵視です。防空識別圏の設定や尖閣諸島での領有権主張など、中国の「力による現状変更」は決して容認できませんが、新大綱には「力には力を」の発想が色濃くにじみ出ています。
その最大の目玉が、無人偵察機による「常続監視」や陸上自衛隊への「水陸両用部隊」創設を柱とする「海兵隊」化です。また、平時と有事の中間である「グレーゾーン」の対応を強調し、「有事」でなくとも軍事力を行使する道を探っています。
ただ、安全保障の要は、敵をたたくことではなく敵をつくらないことです。防衛省関係者も、「何より重要なのは、事態をこれ以上、悪化させないことだ。日中の海上連絡メカニズムの具体化や防衛交流再開などを働きかけるべきだ」と指摘します。
改憲日程に遅れ
NSSや新大綱は同時に、安倍政権が狙う憲法9条改悪=「国防軍」創設の一里塚でもあります。ただ、国民の反撃により、思惑通りには進んでいない点も注目されます。
小野寺五典防衛相は8月の時点で、年内に集団的自衛権行使を可能とするための憲法解釈を行い、新大綱に反映する考えを示していました。
しかし、与党・公明党や、中国や韓国の反発を危惧する米国との矛盾もあり、日程は大きく遅れています。このため、新大綱の基本理念には、「積極的平和主義」と同時に、「日本国憲法の下、専守防衛に徹する」とした従来通りの文言が併記されました。
危険性と矛盾が併存する安倍流「国家安全保障」を注視し、暴走させないたたかいが求められています。 (竹下岳)
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