2013年12月3日(火)
主張
秘密保護法案審議
国民の不安 つのるばかりだ
6日の国会会期末を控え、秘密保護法案の審議が緊迫しています。安倍晋三政権は成立を強行する構えですが、審議などを通じて法案の危険な中身が知られるとともに国民の間では不安がいっそうつのっており、反対の世論が広がっています。国民の目、耳、口をふさぎ、基本的人権も民主主義も破壊して「戦争への道」を突き進む、危険な法案の強行成立は許されません。連日の国会要請行動や6日の東京・日比谷野外音楽堂での大集会など、国民の反対運動を広げていくことが急務です。
反対の声を「テロ」と非難
「秘密保護法絶対阻止!」の「絶叫戦術」は、「テロ行為」とその本質においてあまり変わらない―自民党の石破茂幹事長が自らのブログで発信したこのことばほど、国民の声に追い詰められながら成立を急ぐ、推進勢力の焦りを示すものはありません。石破氏はその後一部を取り消しましたが、発言そのものは撤回していません。安倍政権とその与党の自民、公明が国民の批判の高まりをどれほど恐れているかは明らかです。
秘密保護法案は、「行政機関の長」が「安全保障」に妨げになると判断すれば、軍事、外交、スパイ防止、テロ対策などの行政情報を「特定秘密」と指定し、公務員や国から仕事を請け負う関連事業者が、故意であれ過失であれそれを漏らせば、最高懲役10年もの重罰を科す弾圧立法です。
法案は、石破幹事長が口にした「テロ」について、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他のものを破壊する活動」とあいまいに規定するだけです。石破氏がいうように、国会を取り巻く「秘密保護法反対」の「絶叫」が「テロ」扱いされる危険は、決してありえない話ではありません。国民世論を敵視するだけにとどまらない、石破氏の発言の重大性は明らかです。
秘密保護法案の危険性は、なにが秘密かそれ自体が秘密で、「行政機関の長」の判断で「特定秘密」がどこまでも広がる危険に限られません。「特定秘密」の保全を義務付けられる公務員だけでなく、なにが「特定秘密」に指定されているかを知らされていない国民も、行政情報を知ろうとした場合、「人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により…」「特定秘密」を取得しようとしたとして重罰に処せられる恐れがあります。未遂でも、共謀・教唆・扇動しただけでも処罰の対象です。逮捕され、裁判にかけられるときにも、どんな「特定秘密」を取得しようとしたのかは公開されません。
まさに「暗黒政治」「暗黒裁判」をねらうものであり、「秘密保護法反対」の声を「テロ」と同列視する石破氏の発言は、法案の危険な本質を先取りしています。
国民の多数は法案に反対
秘密保護法案反対の声は、法曹界やジャーナリストなど、立場の違いを超えて急速に広がっています。週明け2日付「朝日」の調査は、「反対」が50%に達し、「賛成」が25%に減りました。今国会で成立させるは14%にすぎません。
こうした声を石破氏のように「テロ」呼ばわりするのでは、国民の不安はいっそうつのり、安倍政権の孤立は深まるばかりです。