2013年10月28日(月)
エジプト 「デモ規制法案」反発強まる
対応迫られる暫定政府
国民の空前のデモと軍の介入によってモルシ前大統領が解任(7月3日)されてまもなく4カ月、エジプトは今、暫定政府が閣議決定した「デモ規制法案」をめぐり揺れています。表現の自由を抑圧し、2011年初めの「革命」の成果を台無しにしかねない内容に反対の声が急速に広がり、政府は対応を迫られています。(カイロ=小泉大介 写真も)
規制に放水・催涙ガス使用を明記
“革命で獲得権利ほごに”と批判も
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「暫定政府は人権団体や政治諸勢力の批判の波にさらされている。デモを規制する法案は革命の成果に逆行するものだという批判を前に、政府は世論の同意を得られない限りこれを制定しないと表明せざるを得ない状況に追い込まれている」
政府系英字紙アルアハラム・ウイークリー最新号は「新法、新たな危機」との見出しの記事で「デモ規制法案」についてこう報じました。
内務省が主導
内務省が主導したとみられる問題の法案は、モルシ氏解任後に当面の立法権を握った暫定政府が多数決で閣議決定し、承認を求めるため16日にマンスール暫定大統領に送付しました。
内容は、デモ主催者が事前に該当地区の警察へ開催を通知することを義務付けたうえで、内相らにその中止や延期、会場の変更などを決定し命令する権限を与えています。放水や催涙ガス使用など、治安部隊が「違法」なデモを解散させる手段まで明記しています。大統領宮殿や議会(国会)棟、政府庁舎周辺などでのデモははじめから禁止されています。
暫定政府は法案を、モルシ前大統領の復職を求めてデモを続けるイスラム主義組織・ムスリム同胞団などとの「テロとのたたかい」の一貫だと宣伝しています。しかし、国民のデモに応えてモルシ氏を解任したと主張してきたはずの暫定政府が、文言上あらゆるデモが抑圧対象となり得る法案を決定したことへの批判は高まるばかりです。
青年組織でも
数百万人という規模のモルシ氏退陣要求デモ(6月30日)の先頭に立った青年組織「反抗」の幹部、アブデルアジズ氏は「いかなる法律も(ムバラク前独裁体制を崩壊に導いた一昨年の)1月25日や(今年)6月30日のような平和的デモを規制することはできない」と表明。本紙が話を聞いたさまざまな政治組織の幹部からも次のような声が返ってきました。
「このような法案が制定されれば、革命が獲得した様々な権利や自由がほごにされ、警察国家の復活を許してしまう。法案の是非を議論する余地はない」
「暫定政府は、反モルシの国民的デモがあったからこそ、今、権力についていることを忘れてしまったのか」
「ムスリム同胞団には今ある法律で対応できるし、そうしなければならない」
閣内からも「デモの自由は革命の最も重要な成果だ」(エルディン副首相)と反対論が噴出。高まる批判に対し、暫定政府のベブラウィ首相は国民との対話を行う意思や法案を修正する可能性について言及しています。
憲法改正、議会選挙、大統領選挙という今後のエジプトの政治プロセスを占う上でも、法案の行方が注目されます。