2013年8月31日(土)
軍事費概算要求 陸海空一体“海兵隊”化
外交なき軍拡の悪循環
2014年度軍事費の概算要求で安倍政権は、「離島防衛」を前面に押し出して、事実上の海兵隊部隊の早期創設方針を示しました。
強襲能力向上
これまで陸上自衛隊では、西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市)が中心になって米海兵隊との共同訓練を重ね、上陸訓練などのノウハウを吸収。国民の目を避けるように“海兵隊化”を進めてきました。
しかし、今回示された「離島防衛」の方針は、水陸両用車を配備する「水陸両用準備隊」の陸自への編成に加え、上陸部隊を作戦地まで運ぶ強襲揚陸艦の準備、制空権を確保するための戦闘機の能力強化など、海・空の戦力・輸送力を統合して自衛隊全体の強襲上陸作戦能力の向上を図るものです。オスプレイ導入の検討もこうした“海兵隊化”の文脈に位置づけられた既定路線とみることができ、これまでの一部の陸自部隊の強化とは次元が異なります。
金田秀昭・元海自護衛艦隊司令官はかつて講演でこう述べています。
「陸自は上陸作戦だけでは海兵隊になれない。輸送艦が強襲揚陸艦のような役割を果たし、戦闘機が近接航空支援をやる。海兵隊化とは自衛隊の文化を根本から変えることだ」
重大なのは、「防衛」を建前にしてはいるものの、「離島」を「他国の海岸線」に置き換えれば、これがそのまま海外への侵攻能力の強化につながることです。“海兵隊化”とは自衛隊の侵略的変質を意味します。
軍事費総額は4兆8928億円(SACO・米軍再編関係経費含む)、13年度比で1390億円(2・9%)の増と、過去10年にない大幅な伸びを求めています(グラフ)。自衛官実員は3自衛隊合計で519人の増で、定員数も190人増やします。年末までに見直す「防衛大綱」では、このような軍拡路線が方針化される見込みが濃厚です。
ツケは国民に
「離島防衛」を強く打ち出すこれらの軍備強化が、尖閣諸島の領有権をめぐって対立する中国を刺激することは必至です。小野寺五典防衛相はあくまで自国防衛のためであり、「周辺国に丁寧な説明が必要だ」(29日会見)と強調しますが、そもそも尖閣問題でも北朝鮮問題でも重要な立場にある中国や韓国とは、政権自身の歴史認識が障害となって首脳会談どころか、まともに2国間会談ができていないのが現状です。
外交関係が滞る中での軍拡が、隣国に不信と懸念を与えることは避けられず、いくら「防衛」の必要性を強調しても、それは対話を遠ざけ、軍拡競争の悪循環につながります。それは国民にとって、外交停滞のツケを軍事費として税金で負担するという何の利益もない道であり、侵略戦争の反省をふまえ、他国に軍事的脅威を与えないという日本国憲法の掲げる理念とも正反対の道です。(池田晋)
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