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2013年5月22日(水)

橋下「慰安婦」暴言の根っこに首相の認識

昨年「勇気ある発言」と絶賛 安倍氏

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 日本維新の会の橋下徹共同代表の「慰安婦制度は必要」(13日)との暴言について、安倍晋三首相(自民党総裁)は「立場が異なる」(15日)と人ごとのような態度をとっています。一方で、橋下氏の暴言そのものに対してはいっさい批判せず、「侵略の定義は定まっていない」という自らの発言についてもいまだに撤回していません。首相のごまかしは通用するのでしょうか。

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(写真)日本軍「慰安婦」問題での橋下氏の暴言を「大変勇気ある発言だ」と評価する安倍氏のインタビュー記事を掲載した「産経」2012年8月28日付

「橋下氏は同志」

 安倍首相と橋下氏は「立場が異なる」どころか、政治的にも思想的にも“蜜月”を続けていました(表参照)。焦点となっている日本軍「慰安婦」問題でも「産経」の昨年8月28日付記事で安倍氏は、「慰安婦」問題の強制性と政府の関与を認めた「河野談話」(1993年)を「強制の事実に確たる証拠はない」と非難する維新・橋下氏の発言を絶賛。安倍氏は「私は大変勇気ある発言だと高く評価している。彼はその発言の根拠として、安倍内閣での閣議決定を引用した。戦いにおける同志だと認識している」と述べていました。

 安倍氏は、昨年11月30日の日本記者クラブの党首討論でも、「安倍政権時代にそれ(強制連行)を証明する事実がなかったことを閣議決定している」と述べ、「産経」12月31日付などで同様の発言を繰り返しています。橋下氏も「僕の発言の根拠は2007年の閣議決定」(16日、フジテレビ系番組)と発言しているように、橋下氏の“慰安婦暴言”の根っこには、“強制連行はなかった”とする安倍首相らの認識があります。

政府の責任否定

 実際、安倍氏と4人の閣僚が賛同者として名前を連ねた米国紙「スターレッジャー」意見広告(2012年11月4日付)は、「(『慰安婦』は)『性的奴隷』ではない。彼女らは当時世界中のどこにでもある公娼制度の下で働いていた」と述べ、強制性と日本政府の責任を否定する主張をしています。

 これは成り立たない議論です。

 国連人権委員会はじめ国際社会が、「慰安婦」制度を「性奴隷」と批判しているのは、「慰安所」という施設内に女性たちを拘束し、兵士らとの性行為を強制したという否定できない事実そのものです。

 「河野談話」は、「慰安婦」の生活は「強制的な状況の下での痛ましいものであった」こと、「その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と認めています。安倍、橋下両氏が「発言」の根拠にしている「閣議決定」(07年の第1次安倍内閣)も実は「河野談話」の継承を表明しているのです。

 このように国際社会で通用しない議論のため、安倍首相が表だって言えなくなったことを今回、橋下氏が代弁。それが国内外からの批判をあび、あわてて「立場が異なる」とごまかしているのが事の真相です。

 政府として「河野談話」継承の立場をとるかぎり、「強制性を立証する文書がないから強制の事実はなかった」などという議論を肯定する余地はまったくありません。選挙直前に批判を受ける維新の姿を見て、自民党があわてるのも無理はありません。

 東京都議選(6月14日告示、23日投票)に向けて「前市長の○○」(南多摩選挙区)と連呼して維新を名乗れない候補や、「数日、この問題だけの対応に追われ、本来の選挙活動ができていない」と嘆く維新の参院候補も出てきています。

 維新・橋下氏に対する国内外の批判は、そのまま安倍首相に突き刺さるものです。それは韓国の新聞、東亜日報14日付が「日本の最高指導者である総理が侵略を否定して以降、保守勢力がはばかることなく本音を明かしている。安倍総理がいる限り、政治家の妄言は続くだろう」と指摘したとおりです。

 (松田繁郎)

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