2013年5月20日(月)
橋下氏、見苦しい言い訳
「慰安婦」暴言
「大誤報をやられた」(17日)―。「日本維新の会」を率いる橋下徹大阪市長が旧日本軍による「慰安婦制度は必要だった」(13日)という自らの大暴言について見苦しい言い訳を続けています。
(藤原 直)
●疑問いくらでも
「(慰安婦制度の)必要性は(第2次世界大戦)当時は感じていたんでしょうね。僕は認めませんよ。『その当時に』『みんなが』ですよ」(16日朝の民放番組)
ならばなぜ、最初から、あってはならない制度だったと言えなかったのか。当時でもみんなが認めていたのか―。疑問がいくらでも浮かぶ無様(ぶざま)な言い訳です。
17日、国会では「維新」の西村真悟衆院議員が橋下発言を擁護しようとこう述べました。「慰安婦がセックススレイブ(性奴隷)と転換されている。われわれは積極的に『売春婦とセックススレイブとは違うんだ。売春婦は日本にまだうようよいるぞ、韓国人』(と主張し)、反撃に転じた方がいい」
民族・女性蔑視丸出しで、慰安婦制度の被害者をおとしめる暴言です。「維新」は即撤回、除名へと動き、橋下氏は17日夜、西村発言に対し「大変申し訳ない」と謝罪。「(自分とは)全く違う。僕は韓国の方や元慰安婦の方を侮辱する意図は全くない」と述べました。
しかし橋下氏は本当に「全く」違うと言いきれるのでしょうか。
日本軍「慰安婦」の本質的問題は、旧日本軍が警察や行政組織と一体となって、多くの女性を軍の慰安所に閉じ込め、“軍人の性欲処理の道具”として「性奴隷」状態においてきたところにあります。女性たちを集めた方法は、軍の要請を受けた業者による詐欺・甘言や日本軍自らが強制連行したケースなどさまざまですが、先に述べた本質は変わりません。
ところが橋下氏は「強制連行があったという前提で(日本は)『性的奴隷』(という)特殊な制度を使っていたと見られてしまっている」と話をすりかえ、「違うところは違うと言わなきゃいけない」(16日)と語ります。「軍や官憲が暴行・脅迫をもって無理やり強制連行してそういう仕事に就かせた証拠はない」と主張し、「性奴隷」といわれるような深刻な戦争犯罪ではなかったというのです。
これは無知とごまかしに基づく主張です。
軍や官憲による強制連行の事例は1990年代以降の「慰安婦」裁判でも日本の裁判所が事実認定を確定しています。94年のオランダ政府報告書にも列挙されており、女性が連行され売春を強制されたスマラン事件については橋下氏自身が昨年10月に「事実としては認めます」と語っています。
●安倍答弁書でも
橋下氏が強制連行否定の根拠としてきたのは、第1次安倍政権時代の答弁書(07年3月16日)です。この文書で、日本軍の関与と強制性を認めた「河野談話」の発表(93年)までに政府が発見した資料の中には「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」としています。このこと自体、専門家に疑問を持たれていますが、同答弁書でも結論としては「河野談話」を「継承」するとしており、事実上、強制連行を認めています。
その安倍晋三首相はかつて、「慰安婦」を「キーセン(妓生)ハウス」になぞらえ、「韓国にはキーセン・ハウスがあって、そういうことをたくさんの人たちが日常どんどんやっている」(97年刊行の『歴史教科書への疑問』)などという暴言を平然とはいてきました。その発想は西村氏らの暴言と何ら異なりません。