2013年5月19日(日)
株式会社の保育所参入
厚労省が促進通知
政権が固執 背景に財界の要求
安倍政権は、「成長戦略」の目玉政策に保育所の待機児童解消を掲げています。しかし、そのもとで着々と進めているのは、認可保育所への株式会社参入を促進し、財界のもうけを成長させる戦略です。
(鎌塚由美)
厚労省は15日、2000年に解禁された認可保育所への株式会社の参入をいっそう促す通知を都道府県・政令・中核市に送付しました。
通知は、安倍政権が“経済成長のため”として立ち上げた規制改革会議が、“待機児童解消が進まないのは自治体が株式会社の参入を排除しているからだ”と問題をすり替えて、厚労省に出させたものです。
疑問根強く
自公民が3党合意で昨年8月に強行成立させた「子ども・子育て関連3法」(新システム)では、基準を満たせば株式会社も自動的に認可される仕組みになっていることを強調したうえで、通知は「新制度施行前の現時点においても、新制度施行後を見据え、積極的かつ公平・公正な認可制度の運用を」と促しました。自治体の判断で株式会社を排除することがないよう戒めるものです。
自治体が株式会社の参入に慎重なのは、株式会社が運営する保育所で、突然の閉園や職員の激しい入れ替わりなどの問題が生じているからです。営利を目的とする株式会社が保育になじむのかという疑問は保護者や保育関係者に根強くあります。さらに15年からの導入が狙われる新システムでは、現行制度では認められていない株主配当が認められ、株主配当のために人件費が抑制される危険が指摘されています。
安倍政権が株式会社の参入促進に固執する根底には、財界言いなりの姿勢があります。
保育への株式会社参入を一貫して求めてきた経団連は、要求をエスカレートさせています。14日には「待機児童の解消に向けた一層の取り組みを求める」との提言を発表。「社会福祉法人とのイコールフッティングをはかるべき」だとして、株式会社への運営費の増額などを要求しています。
願いに背く
新システムでは「幼保連携型認定こども園」への株式会社参入が狙われましたが、これに反対する声の高まりで不可とされた経過があります。これに対し、提言は同施設への株式会社の参入に固執し、さらなる規制緩和を迫っています。
保護者は、子どもの安全や健やかな育ちを願い認可保育所の増設を求めています。そのためには、保育士の人材確保や十分な配置が欠かせません。
人で成り立つ保育で利益を上げようとすれば、削られるのは人件費。保育でもうけをあげる仕組みを前提とした株式会社参入は、保護者の願いにこたえるものとは到底いえません。