2013年5月3日(金)
解説
保育への株式会社参入
突然の閉園、運営の混乱も
規制改革会議は、待機児童がここまで膨らんだのは、都道府県や自治体が株式会社の参入を排除してきたからだと描き、自治体攻撃に走っています。
しかし、待機児童が減らなかった原因は、自公、民主の歴代政権が詰め込みと規制緩和だけで対応しようとし、まともに認可保育所を増設してこなかったことにあります。その責任を棚に上げて、自治体を攻撃するのは本末転倒です。
規制改革会議では、「株式会社を排除している」と自治体名をわざわざ挙げています。しかし自治体が株式会社の参入に慎重なのは、「営利目的の株式会社と保育が両立するのか」という重大問題があるからです。
実際、株式会社の突然の経営破綻で、子どもたちが行き場を失う事態も生まれてきました。2008年に経営破綻したエムケイグループでは、東京・埼玉・神奈川にあった保育所や学童保育29施設が突然すべて廃園となりました。同グループによる保育所「ハッピースマイル」(東京都中野区)では、閉園を知らせる1枚のファクスが保護者や職員に送られてきたのは閉園前日のことでした。
東京都荒川区では、指定管理者制度によって委託をうけた株式会社の保育所が、20人の保育士のうち15人が経験3年以下という状態で運営を開始。保育士が次々と退職して混乱し、区が指導監督に入る事態もおきています(2006年)。
15年から導入が狙われる「子ども・子育て支援新制度(新システム)」では、自治体が株式会社の参入を拒めなくなり、保育所運営費の使途制限が完全に撤廃され、公金が株主への配当に回る問題が指摘されています。
民主党政権下で「新システム」が議論されていた際には、自公両党からも批判の声があがっていました。「保育を金もうけの場にするのかという保育関係者の不信は根強い。株式会社の参入は慎重であるべきだ」(自民・馳浩衆院議員)、「安易な事業撤退や営利主義による人件費の圧迫が起こらないのか」(公明・池坊保子衆院議員=当時=)。
株式会社の参入拡大に固執する安倍政権のねらいは、「待機児童解消」を安上がりに済ませるとともに、保育をもうけの対象にすることでしかありません。安心して預けられる保育所による待機児童解消を求める父母の願いと真っ向から反するものです。 (鎌塚由美)