2013年3月30日(土)
主張
金融円滑化法打ち切り
中小企業支援策の強化こそ
「アベノミクス」がもてはやされ、一部の大企業は業績の好転を見込む一方で、中小零細企業の経営は依然厳しい状況に置かれています。中小企業支援策の抜本的な強化が求められています。そうしたなか、安倍晋三政権が中小企業の資金繰りを支援する金融円滑化法を今月末で打ち切ろうとしているのは、まったく冷たい仕打ちといわなければなりません。
足元の景況感は好転せず
円滑化法は、中小企業や住宅ローンの利用者が金利の引き下げや返済の引き延ばしなどを求めた場合に、金融機関に応じるよう努力することを定めた法律です。リーマン・ショック後の不況への時限対策として2009年から施行されました。
円滑化法の打ち切りは、厳しい経営環境のなかで踏ん張ってきた中小企業や住宅ローンの負担に苦しむ国民の切実な願いに反するものです。政府は同法終了後も「円滑な資金供給に努めるよう金融機関に促す」(安倍首相)としています。金融検査・監督の立場も変えない、金融機関の対応は変わらないと説明します。しかし、同法が打ち切られれば、法律が求めていた報告・公表などの事項はなくなり、中小企業への対応も金融機関任せになってしまいます。政府と金融機関の責任が後退することは火を見るよりも明らかです。
日本商工会議所(日商)が行った中小企業を中心にした2月の景況調査でも、足元の景気は好転していないことが浮き彫りになっています。日商は「足元は景気回復の実感が乏しく、やや期待先行の状況が続いている」と分析しています。急激な円安による輸入原材料高が収益を圧迫し中小企業の経営に影を落としつつあります。仕入れ価格上昇分について「ほとんど(販売価格に)転嫁できていない」とする業者は7割を超えました。「アベノミクス」は、中小企業にとって“恩恵”どころか“害悪”を及ぼすものです。
巨大な内部留保をかかえる大企業とは違い、それこそ毎日の資金繰りにも苦しむ中小零細企業にとって円滑化法によって金利の引き下げや、返済の延期を認められる道が開かれていることは文字通りの「命綱」です。「アベノミクス」がもてはやされ、大企業の資金需要が拡大して金融機関による中小企業の選別が強まれば、弱体化した中小企業が倒産に追い込まれる状況になりかねません。
金融機関による強引な貸し渋りや貸しはがしが再び起こり日本経済に重大な影響を与えるような事態はあってはなりません。金融面だけでなく、弱い立場の中小零細企業への支援が必要です。
大企業支援は熱心だが
政府は大企業に対しては、研究開発減税の拡充や日本政策投資銀行のファンド(基金)の創設など公的資金も使った支援を熱心にすすめています。他方で、もっとも支援が求められる中小零細企業の金融に対しては、円滑化法を打ち切るというのでは、まさに本末転倒のやり方です。
中小企業は企業数の99%を占め、そこで働く人は全体の約7割を担う日本経済の主役であり、「地域社会と住民生活に貢献」(中小企業憲章)する存在です。その社会の主役を支援することは、日本経済の立て直しにとっても不可欠です。