2013年2月7日(木)
慰安婦の悲劇忘れない 米国での取りくみ 1
ニューヨーク州議会の決議、「きっぱり認め 前進を」
この悲劇を決して忘れないでほしい―旧日本軍による「慰安婦」問題をめぐり、米国でこうした声が上がっています。1月29日、東部ニューヨーク州議会の上院は「慰安婦」を記憶にとどめるとした決議を採択。記念碑の設置も相次いでいます。ニューヨーク、ニュージャージー両州でこの問題をめぐる関係者の思いを聞きました。 (ワシントン=山崎伸治 写真も)
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「本議会はその審議に際し、世界中に『慰安婦』として知られるようになった人々に敬意を表したニューヨーク州の記念碑を記念するよう決議する」
ニューヨーク州議会上院が発声による採決で全会一致、採択した決議の一節です。ここでいう「ニューヨーク州の記念碑」は、昨年6月に同州ナッソー郡ウェストベリーにあるアイゼンハワー公園の退役軍人記念広場に設置されました。
「象徴的な場所」
ニューヨーク・マンハッタンから東に電車とバスを乗り継いで約1時間半。ゴルフコースが三つもあるという広大な公園の一角、退役軍人の記念塔を中心に、ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の記念碑をはじめ、さまざまな碑が点在する中に「慰安婦」の記念碑はあります。
「この場所に設置したのは、ここが象徴的な場所だと思ったからですよ」
こう語るのは、民間組織「韓国系米国人公共問題委員会」(KAPAC)会長のデービッド・チョルウ・リーさん(58)。この記念碑の設置を呼び掛けた一人です。決議の採決にも招待され、議場で紹介されました。
その記念碑にはこう刻まれています。
「『慰安婦』として世界に知られた、1930年代から45年まで大日本帝国政府の軍隊によって性的奴隷とされるため拉致された20万人以上の女性と少女を記念して。彼女らが人道に対する憎むべき罪の犠牲となったことは、知られないままであってはならない。彼女らが受けた人間の尊厳の重大な侵害を忘れてはならない」
謝罪なしに衝撃
米国民の間で「慰安婦」のことがそれほど知られているわけではありません。でも、「『慰安婦』のことを知った人たちは一様に『どうしてこんなことが起きたんだ』と驚きます」(リーさん)
州議会に決議案を提出したトニー・アベラ議員(民主党)もそうした一人でした。
「『慰安婦』にはショックを受けました。そして日本政府が公式な謝罪を行っていないということにも、ショックを受けました」
決議が採択された後の記者会見でこう振り返ったアベラ議員は、「私たちは過去の過ちを認め、それが将来二度と起きないようにしなければならないのです」と強調します。
州議会の決議は外交問題に触れることはできません。そのため今回の決議も当初の案にはあった日本政府への言及がなくなっています。しかしアベラ議員は静かに言いました。
「私は日本政府に求めたい。きっぱりと過去に起きたことを認めて、そして前に進もうではありませんか」 (つづく)