2013年1月18日(金)
主張
異常な国債頼み
ツケは消費税増税では無責任
「借金財政の拡大を続けていいのか」―安倍晋三政権が鳴り物入りで打ち出した「緊急経済対策」などを盛り込んだ今年度(2012年度)の補正予算案が、「経済対策」を賄うために5兆円以上、年金財源を含め8兆円近い国債増発を計画したことに、懸念と不安が高まっています。安倍首相は、「デフレ不況」打開に「強い意思」を示したといいますが、効果も不確かな対策で財政を破綻させ、そのツケに消費税などの増税を押し付けるというのでは国民にとってはそれこそたまりません。
過去3番目の国債依存度
今年度補正予算案では、10兆円を超す「緊急経済対策」を賄うために、5兆2210億円の国債を発行します。基礎年金の国庫負担を賄う財源にも事実上の増税の先取りといえる2兆5842億円の「つなぎ国債」を発行するため、補正予算全体の国債発行額は7兆8千億円あまり、当初予算と合わせた今年度の国債発行額は52兆円にのぼります。歳入に占める国債依存度は51・8%に達し、過去3番目の高さとなりました。
国債は国の借金なので、いずれ税金で返さなければなりません。日本の財政法は、ばく大な軍事費を返す当てのない国債で賄い、財政も経済も破綻させた戦前の経験から、国債発行に枠をはめてきました。ところが歴代自民党政府は、「高度経済成長」に必要だからとまず公共事業を賄う建設国債の発行をはじめ、1970年代になると不況が大変だからと財政法に認められない赤字国債(特例国債)も発行して、財政を破綻させてきたのです。国債残高はうなぎのぼりに増え続け、いまや国と地方の長期債務は1千兆円に迫る勢いです。
歴代自民党政府は、公共事業でつくる道路や橋は次の世代に残るので建設国債で賄っても大丈夫だと言い訳しましたが、役に立たない無駄なダムや“巨大釣り堀”にたとえられるような使い道のない巨大港湾や定期便も飛ばない空港では、残るのは借金だけです。自民党政府が繰り返し社会保障費の抑制や消費税の導入・増税を企ててきたのは、そのツケを国民に押し付けるためです。
安倍政権が、「デフレ不況対策」だといって公共事業中心の「緊急経済対策」を打ち出し、国債増発で賄おうとしているのもまったく同じ繰り返しです。「経済対策」には、未整備の高速道路の整備や「国際競争力強化」を口実にした国際コンテナ戦略港湾の整備などが盛りだくさんです。不要不急の公共事業のため、湯水のように予算をばらまき、国債を増発するというのでは、財政にとっても経済にとっても百害あって一利なしです。財政破綻のツケは結局、いま予定されている以上の増税となって、国民に跳ね返ってきます。
国民の所得増やす対策を
安倍政権は異常な金融緩和と財政出動、「規制緩和」などの大企業へのてこ入れで「強い経済」を実現するといいます。しかし、財政を立て直す見通しもないまま国債頼みを続ければ、それだけでも国債利回りの上昇による金利負担の増加など、国民の負担が増えるのは目に見えています。
従来型の対策をさらにすすめる安倍政権の経済政策をやめさせ、働く人の所得を増やし、消費を盛り立てて経済を立て直す対策に転換していくことが急務です。