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2013年1月15日(火)

週刊紙記事改ざん

中国社会に 波紋

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 中国の週刊紙・南方週末(広東省)の記事が同省の共産党委員会宣伝部の指示で改ざんされた問題が、新年を迎えたばかりの中国社会に波紋を広げました。露骨な改ざんに記者らが反発、インターネットを通じて報道の自由を求める知識人や市民の支援も広がりました。(北京=小林拓也)


「報道の自由」奪う

写真

(写真)改ざんされた南方週末新年号(小林拓也撮影)

 南方週末新年号(3日発行)は1面の左上に「追夢」(夢を追う)との題字を掲げ、治水に力を尽くした4000年前の英雄の絵を大きく掲載。宇宙飛行士やノーベル賞作家の莫言氏ら夢を実現した中国人の物語を紹介しています。

 しかし7日にまとめられた「南方週末新聞職業倫理委員会」の報告書によると、新年号は昨年12月下旬から広東省党宣伝部の指示で何度も改ざんされたものでした。

 新年号の「新年の祝辞」は当初、「中国の夢、憲政の夢」と題して憲法に基づく政治の推進などを主張。しかし当局の指示で、「われわれはいかなる時よりも夢に近づいている」という見出しになり、内容も大幅に書き換えられました。

 1面トップの題字も最初は「中国夢 夢之難」(中国の夢、実現は難しい)の6文字でしたが、最終的に「追夢」に変更。他にも多くの記事が削除させられました。

 改ざんは、編集作業が終わり、記者が年末年始休暇に入った後も続きました。1日午前3時、編集長と副編集長の2人が党宣伝部に呼び出され、副部長が▽新年の祝辞をさらに百数十字書き換える▽反日デモで理性的愛国心を示した広州の少年の記事を削除―などを要求。編集長と副編集長は誰もいない編集部で、2人だけで六つの面を修正しました。

 ある弁護士は「当局がメディアを露骨に規制した。これは憲法でも許されない」とし、中華人民共和国憲法第35条に「中国の公民は、言論、出版、集会、結社、デモの自由を有する」とあると指摘。「中国のメディアに関わる人たちが自由に記事を書けるようになるのを期待する。これは憲法に書かれた権利だ」と述べました。

記者・市民が反発

 中国ではメディアは政府・党の管理下に置かれていますが、当局のあまりに露骨なやり方に対して、南方週末の元記者・編集者約50人が4日、インターネット上で広東省党委宣伝部長の辞任と謝罪を求める公開書簡を発表。記者と当局との対決が始まりました。

 ところが6日夜、南方週末編集部が「微博」(中国版ツイッター)に、当局の指示による書き換えを否定する声明を発表。これに対し、同紙の記者ら約100人が「偽声明だ」と抗議の共同声明を出しました。さらに「微博」上で、弁護士や知識人、学生、市民らが当局の行き過ぎたやり方に反発し、南方週末の記者を支持する声明や写真を次々に発表しました。広東省広州市の南方週末本社前では市民が記事改ざんへの抗議行動を始めました。

 ある知識人は「南方週末は当局に完全にひざまずくことを拒否した。メディアが初めて当局にノーの声を上げた。報道に規制が存在することを国民は知った。中国の言論の自由にとっていいことだ」と評価。ある作家も「中国の独立した社会世論の始まりを示すものだ」と今後に期待感を示しました。

連帯する地方紙

 南方週末新年第2号(10日付)は予定通り発行されました。当局と南方週末との間で事態収拾に向けた合意があったと思われますが、明らかにはされていません。

 10日付の南方週末は、人民日報などの論評を「評論」する形で、「党がメディアを管理するのは原則だが、管理する方式は時代とともに発展しなければならない」「一方的で力に頼った横暴な振る舞いで現状を変えようとすることは、不必要な紛争や混乱をもたらす。絶対にやるべきではない」などと、当局のやり方を遠まわしに批判しました。

 一方、7日付の環球時報(人民日報系の国際情報紙)は「西側諸国でも、主流メディアが政府に公開で対抗する選択はあり得ない。中国でそんなことをすれば、必ず敗者になる」などと強硬な論調の社説を掲載。党中央宣伝部が国内各紙に対し、同社説を転載するよう指示したことが、一部の地方紙の反発を招きました。

 北京の有力紙・新京報は指示に抵抗し、9日付で同社説を縮めて小さく掲載することで抗議の意思を表明しました。また同日付のグルメのページで、南方週末と発音が似た「南方的粥」(南方のおかゆ)を紹介。南方の大地から来た「勇敢な心」と南方週末に暗にエールを送りました。

 また、河南省の地元紙・東方今報は、11日付の1面で「南方週末」との題字を掲げ、「われわれは一緒にいる」とした紙面を展開。中国週刊紙・経済観察報も最新号(14日付)で「新年早々、寒波が南方を襲い、全社会に激しい論争を巻き起こした」とし、当局を暗に批判する論評を掲載するなど、地方紙に連帯の動きが広がっています。


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