2012年11月24日(土)
論点
復興予算の流用
財界要求で民自公談合
復興予算の流用が国民の怒りを呼んでいます。この問題の根底にも「財界中心」政治があります。
リストラ企業に
政府は復興費を19兆〜23兆円とし、そのうち8・1兆円を所得税、住民税などの庶民増税でまかなう計画です。子ども手当の減額や公務員給与の削減も財源とされます。
ところが、少なくとも約2兆円が被災地とは関係ないものに流用されようとしています(表)。被災地で再建が必要な家屋を20万戸と多めに見積もっても、1戸あたり1000万円配ることができる金額です。
企業に対する「国内立地補助金」では、補助決定された金額の8割が大企業向け。トヨタ、キヤノン、パナソニックなどが被災地と関係ない場所で補助を受け、リストラ企業まで支援されています。被災県向けは千葉、茨城をいれて金額で2割にすぎません。
復興増税も、法人税は税率を下げたうえで実施するため実質的には増税になりません。
目的を拡大して
復興予算の流用を生んだのは民主、自民、公明の3党談合です。
復興の基本を定める「震災復興基本法」(2011年6月成立)の当初の政府案は「被災地域の復興」を進めるとしていました。しかし、自公両党の修正要求を受けて、「被災地域」がはずされ、「東日本大震災からの復興」と書き換えられ、「活力ある日本の再生を図る」がつけ加えられたのです。
これに先立つ同年5月、自民党は「日本の再起のための政策」を発表。「復興の加速・事前の防災」をうたって「北方、北陸信越、中国、九州交流圏」での「国土軸の形成」や、道路・鉄道、ハブ空港など、全国での大型事業を打ち出していました。
「本格的復旧・復興予算」と位置付けられた第3次補正予算(11年11月成立)の編成過程では、7・1兆円の上積みを要求。「強靭(きょうじん)な国土づくり」「わが国産業の基盤強化」など、被災地向けでない予算を約1・7兆円も求めました。
公明党も同年9月の提言で、「大震災からの復旧・復興対策」として被災地以外の道路建設、庁舎や自衛隊基地の整備などを潜り込ませたほか、「総合経済対策」として企業の立地補助金の創設を要求。第3次補正予算の採決では、それら、いま復興予算の流用として問題になっている項目が盛り込まれたことを高く評価して賛成しました。(同年11月10日、衆院予算委員会で高木陽介議員)
大企業支援の「立地補助金」の問題などを指摘して第3次補正予算に反対したのは日本共産党だけでした。
日本共産党の佐々木憲昭前衆院議員は3月、国会で仮設住宅の風呂に追いだき機能をつけるよう要求。150億〜200億円ですむと指摘し、自衛隊の輸送機を買い替えるのに復興費を440億円流用することを厳しく批判しました。復興費の流用に社会的な批判が集まる前でした。
こっそり消費税
復興予算の流用は、「官僚が省庁の予算を増やすために流用した」という話ではありません。「財界いいなり」政治が推進してきたのです。
日本経団連は震災直後から大企業本位の「成長戦略」を震災復興の名で進めるよう要求しました。「復興・創生マスタープラン」(11年5月)では、「国全体の復興に取り組む覚悟」を求め、「産業競争力の底上げ」などを盛り込み、それにこたえた民自公が、復興基本法案を書き換えたのです。
民自公3党は、消費税増税法にも、増税分を「成長戦略」や公共事業に流用する規定をこっそり盛り込んでいます。消費税増税を許せば、“社会保障に使う”はずが公共事業に流用されます。
復興費のおもな流用
企業立地補助金 3440億円
全国防災対策事業 1兆579億円
自衛隊輸送機購入などを含む
その他 5000億円
・公安調査庁の自動車購入
・ベトナムへの原発輸出の調査委託費 など