2012年11月6日(火)
復興予算 「全国防災」の2兆円は流用
阪神時「別枠」と財務省
「民自公合意」で推進
復興予算の流用で問題になっている「全国防災対策費」をめぐり、政府が予算を組む根拠として過去の事例にあげた、阪神・淡路大震災での同様の対策費が当時は復興経費に含まれていなかったことが分かりました。約2兆円(来年度概算要求を含む)にのぼる全国防災対策費を、国民への増税などでまかなう復興予算に付け替えた正当性が問われます。
全国防災の必要性を、政府は「阪神・淡路大震災の直後に講じられたものと、少なくとも同程度の予算が必要」(2011年11月22日、吉田泉財務政務官の国会答弁)と説明します。
阪神・淡路大震災直後に組まれた同様の予算とは、1995年度1次補正予算の「緊急防災対策費」です。
この緊急防災対策費は、国費と地方負担をあわせて事業規模1兆3千億円。「大震災にかんがみ、地震災害等の防止のため緊急に対応すべき事業に必要な経費」とされ、被災地外の道路や港湾、公共施設の耐震化などに使われました。
当時、大蔵省(現財務省)主計局が作成した資料によると、緊急防災対策費は、復興予算にあたる阪神・淡路大震災等関係経費などとは別に枠を設けて計上されました。
そのため国が阪神・淡路大震災の復興費とする11兆6千億円(国、自治体負担分)には含まれません。東日本大震災の復興予算を編成した財務省主計局も、「これまで確認したことはないが、阪神・淡路では経費に入っていないはずだ」(担当者)と認めます。
財務省は全国防災を復興予算に付け替えた理由として、昨年6月に成立した復興基本法(民主、自民、公明3党などが賛成)をあげ、法にもとづいて政府で取り組んできたと説明。「復興予算の枠から全国防災を外すとはならない。批判は受け止め、被災地を中心に事業内容の絞り込みをしていく」(主計局担当者)とします。
不適切さ示す
復興予算の流用を指摘してきた塩崎賢明立命館大学教授の話 復興予算を被災地外の事業に使う不適切さがあらためて示された。震災を口実にすれば公共事業に多額の追加予算を組めるという阪神・淡路大震災の経験から、今回も同じように考えたのだろう。しかし、阪神・淡路大震災では復興とは別物として扱われていたし、今回は住民税や所得税などの増税で財源を得て、復興特別会計を組んでいる点も異なる。復興特別会計という明確な目的を持った財布から、全国に流用することは国民の理解を得られない。
復興予算の全国防災対策費 北海道から沖縄まで全国の事業を対象とし、自衛隊駐屯地の風呂の改修や霞が関の官庁耐震化など、復興・復旧と関係のない使われ方が問題になっています。政府は2011年度3次補正予算と12年度予算に計1兆590億円を計上。さらに、5年間で1兆円程度としていた枠を超えて、来年度概算要求では新たに9412億円を盛り込んでいます。
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