2012年7月29日(日)
大阪市議会 政治活動制限条例可決
歴史に逆行する暴挙
27日の大阪市議会で市職員の政治活動を勤務時間の内外を問わず制限する条例が可決されたことは、歴史に逆行する暴挙です。提案した橋下徹市長と賛成した「維新の会」、公明党、自民党の責任が問われています。
「違憲だ」と判決
条例では、地方公務員法で禁止されていない▽政党機関紙の配布▽デモ行進の企画・組織やその援助▽集会での意見表明▽政治的目的を有する文書の発行や配布など10項目もの活動を禁止。広範かつ不明確な規制で市職員を締め付け、憲法19条の思想良心の自由、21条の集会・結社・表現の自由を蹂躙(じゅうりん)するものです。
橋下氏は条例について「国家公務員でだめと言われていることは地方公務員でもやめてくださいということ」(6月21日)と語ってきました。
しかし、同条例が準拠する国公法は1948年に米占領軍の押し付けで全面改悪された弾圧立法で、大半の憲法学者が違憲だと指摘してきたもの。東京高裁は2010年、国家公務員の政党ビラ配布が訴追された堀越事件で罰則適用を違憲だという判決を出しています。
国連自由権規約委員会は08年、日本政府に「表現の自由や公的な活動に参加する権利を不合理に制限している法律を撤回すべきである」と勧告しています。「60年前の亡霊を、いま、引き写しにするなど恥ずべき時代錯誤」(日本共産党の山中智子市議)であり、「国家公務員と分ける必要がない」というなら、国公法の違憲性こそ取り払うべきです。
橋下氏が当初、条例案に盛り込もうとしていた「懲役刑を含む罰則」は、“罰則のない地方公務員法に違反する”と政府答弁書で否定されました。
その後、「原則懲戒免職」とした条例案も批判を浴び、「戒告、減給、停職または免職処分にできる」に「修正」せざるをえませんでした。
大阪弁護士会の藪野恒明会長は、これも懲戒免職を含んでおり、「刑事罰として罰金を科されるよりも重大な不利益を受ける可能性がある」と批判。条例は「違憲の疑いがある」と声明で反対を表明しています。
条例に込められた橋下氏の狙いは何なのか。それは、市の従業員組合がゴミ収集の民営化問題にふれたビラを出したさい、「市の方針について市民に反対を促すような行動は厳しく処分したい」と激怒したことにあらわれています。
物言わぬ公務員
橋下氏が目指す公務員像は、物言わぬ公務員です。条例と同じ日に補正予算として可決された市民生活総攻撃の「市政改革プラン」のように市民に不利益をもたらす方針であっても「市長の顔色をうかがい」(橋下氏)従う。それが市民の求める公務員でしょうか。
憲法尊重擁護義務を負う公務員が、適法に職務を遂行しながら「全体の奉仕者」として、住民の立場で市の方針に意見を述べるのはむしろ責務というべきであり、勤務時間外に政治活動に参加することも憲法で保障されています。これを条例で縛ることなど許されません。大阪は憲法の“真空地帯”ではないのです。(藤原直)