2012年6月9日(土)
オスプレイ墜落
「機体に不具合なし」
米調査結果概要 原因特定せず
防衛省が発表
防衛省は8日、米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイが4月にモロッコで起こした墜落事故について、「米国が決めたマニュアル通りに機能しており、機体に機械的な不具合はなかった」とする米側調査結果の概要を発表しました。
しかし、「機械的な不具合」ではなかったとすれば何が原因だったのかは特定されておらず、最終的な究明は今年遅くまでかかるとしています。
調査結果の概要は外交ルートを通じて7日に日本政府に伝達されました。日本側には結論部分のみが示されたといいます。
森本敏防衛相は8日の記者会見で、7月にも予定されるオスプレイの米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)への配備について、記者から「事故原因が明らかになるまで配備を待ってほしいと(米側に)要請する考えはないか」と問われ、配備時期について米側から通報がないとし、「通報を待って判断したい」と明言を避けました。
解説
沖縄配備容認のアリバイづくり
オスプレイが4月にモロッコで起こした墜落事故について防衛省が米軍調査結果の概要を発表したのは、沖縄への7月配備を容認するためのアリバイづくりの疑いが濃厚です。
今回の墜落事故の原因究明をめぐっては、森本敏防衛相が5日の会見で、最終的な事故調査結果の公表がオスプレイの沖縄配備後になる可能性に言及。事故原因の究明なしに7月配備を認めたものとして、沖縄県内では怒りの声が広がっていました。こうした事態を受け、防衛省が米側と調整し、概要の公表を急いだとみられます。
しかし、航空機事故は通常、報告書をまとめるのに1年かかるとされ、モロッコの事故からは2カ月しかたっていません。こうした段階での発表は、「拙速調査」との批判を免れません。
沖縄の地元紙・琉球新報は4日付社説で、米側が事故原因を「人為的ミス」だと日本側に伝えていたとの報道を受け、沖縄に7月に配備する日程先にありきだと指摘。「そんな拙速調査が信頼できるのか」「(防衛省が)米軍の都合やメンツを優先するなら、自らの組織の名前を『対米従属省』に変更した方がいい」と痛烈に批判しています。
また、沖縄タイムス8日付社説も「具体的なデータのないオスプレイの安全性の説明など県民は納得しない」と強調しています。
(榎本好孝)