2012年5月30日(水)
国側が国民監視認める
「控訴理由書」で事実上
一審での認否拒否が破綻
自衛隊情報保全隊訴訟
自衛隊情報保全隊に平和活動などを監視された市民らが監視の差し止めを求めた訴訟の控訴審で、国側が情報保全隊の国民監視活動を事実上、認める控訴理由書を提出していたことが29日、わかりました。国・自衛隊が国民監視を公然と認めたのは初めてです。
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国民監視訴訟をめぐっては3月26日、仙台地裁での一審判決が監視の事実と違法性を認め原告5人にたいする損害賠償の支払いを命令したものの、監視活動の差し止め請求は却下しました。原告・被告ともに仙台高裁に控訴しました。
一審で国側は、情報保全隊による国民監視活動について記録した内部文書についても、監視活動についても、認否を拒否していました。
国側の控訴理由書は、情報保全隊が原告らを監視し、文書にまとめたことについて、「認めるものではない」としながらも、「原判決(一審判決)の認定については、不服申し立ての対象としない」と、国民監視活動にもとづいた内部文書の作成を事実上認めています。
その上で、情報保全隊が収集した原告の個人情報が、法的保護に値するプライバシーにかかわる情報に該当せず、権利侵害に当たらないと開き直っています。
国側は監視活動を正当化する理由として、自衛隊駐屯地から7キロメートル地点、4キロメートル地点で行われた成人式での市民の宣伝行動などを例に、隊員や家族も参加することから悪影響が生じることが考えられるなどと主張。「自衛隊に対する外部からの働きかけ等から部隊を保全するために必要」な情報収集だとしました。結果として、監視活動してきたことを具体的に認めたものになっています。
憲法・人権上きわめて重大
原告弁護団事務局長の小野寺義象(よしかた)弁護士の話 これまで秘密のベールに包まれていた情報保全隊の国民監視活動を正式に認めたものであり、憲法上も基本的人権上もきわめて重大な事実があらためて明らかになった。
国側が情報保全隊の監視活動の目的と必要性を主張したことで、監視活動の実態が控訴審での審議の中心になり、自衛隊の責任者の証人尋問が必要なことも明らかになった。原告弁護団としては、監視活動の実態を明らかにするために、徹底的にたたかっていきたい。