2012年5月19日(土)
いまメディアで “増税談合”・大連立けしかけ
NHK50分、首相一方的に
これで「公平・公正」か
過去の2回でも
17日夜のNHK番組「ニュースウオッチ9」は、野田佳彦首相をスタジオに招き、「社会保障・税一体改革」などを進める首相の見解を約50分間にわたって一方的に報じました。番組中で消費税増税に反対する主張は一切ありませんでした。「公平・公正」の視点に欠けるものです。
過去にも2回、野田首相の言い分を無批判に報じた「ニュースウオッチ9」。3回目となる今回は、「消費税率引き上げ法案が今日、実質審議にはいった」(井上あさひキャスター)というタイミングでした。
しかも、キャスターの大越健介氏は「(野田首相と谷垣禎一自民党総裁が)一対一で、人のいないところで会われたらどうか」「今だって大連立したっておかしくない」とのべ、民主・自民の密室談合、大連立をけしかけました。
民主党も自民党も、消費税増税では一致しています。党首による密室談合も「大連立」も、大増税推進のためのものです。“増税談合”をけしかけ、しかも、談合に対して「私はうるさいことはいわない(=批判しない)」(大越氏)と容認するなど、権力を監視するメディアとしての役割を放棄するものです。
最近のNHK自身の世論調査(5月11日から3日間)でも、政府が消費税率引き上げ法案を今国会で成立させようとしていることについて、「反対」が37%となり、「賛成」の23%を上回っています。
国民の願いは鮮明です。この声に寄り添って、首相をただすことこそ「公共放送」たるNHKの使命でしょう。
民意反映に逆行
さらに、大越氏は、選挙制度について、「1票の格差」をめぐる「違憲状態・違法状態」をことさら強調し、「全国会議員に言いたいが、これを放置するとしたら、この国は底が抜ける」とまで言い切り、「(小選挙区の)『0増5減』で、違憲状態、違法状態を解消する」ことを提唱しました。
今、問われているのは、民意をゆがめ、政治を劣化させる小選挙区制度を中心とする現行制度を存続させるかどうかです。
「0増5減」は小選挙区を固定化し、比例定数削減につなげるために民主党が固執している案です。
そのことをまともにとらえず、「0増5減」の速やかな実施を求め、その上、民意を反映する抜本改革を実現しようとする議員まで批判したのが、「ニュースウオッチ9」の主張でした。
これは、民意を反映する選挙制度実現の道を閉ざすことにメディア自身が手を貸しているのと同じです。
首相の言い分を無批判に報じ、けしかける―。こうした姿勢は、「放送の公平・公正を保ち、幅広い視点から情報を提供します」とする自らの「行動指針」に掲げられた立場にも反するのではないでしょうか。 (山田英明)