2012年3月27日(火)
市民への“スパイ”断罪
“差し止めまでたたかう” 原告ら決意
陸自国民監視訴訟判決
仙台地裁
自衛隊の情報保全隊による市民を“スパイ”し、平和運動などを監視する行為が、「違法な人格権侵害」と司法によって断罪されました。
|
東北6県在住の市民107人が自衛隊による監視の差し止めと損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁(畑一郎裁判長)は26日、原告5人について「違法な情報収集で、人格権を侵害された」と認定し、慰謝料(計30万円)の支払いを命じました。
原告団長の後藤東陽さん(86)は「裁判長の法の番人としての良心が、この判決を生んだ」と声を詰まらせました。
裁判後の記者会見で、損害賠償を認められた原告の1人、松井美子さんは、大河原町の成人式で憲法9条を書いたチラシを配布して監視されましたが、今年の成人式でもカメラを向ける人物がいたと監視が続けられていることを示し、「違法性を認めたことはうれしいが、差し止めを認めなかったのは納得できない。最後までたたかう」と決意を語りました。
原告団と原告弁護団、支援する会は声明を発表しました。
声明は、自衛隊の文書を真正面から認め、自己の個人情報を正当な目的や必要性によらずに収集あるいは保有されないという権利を「人格権」として位置付け、その侵害に基づく慰謝料の支払いを命じた画期的な判決と評価しています。
しかし、監視行為の差し止めの請求に対しては、不当にも却下したと批判し、「自衛隊および国に対してなぜ自衛隊が監視行為という暴走行為に及んだのか、徹底した原因解明および防止策を求める」としています。
原告団と原告弁護団は、引き続き控訴してたたかうことを表明しました。
陸自情報保全隊
国民監視こんなことまで
|
日本共産党の志位和夫委員長が2007年6月6日の会見で告発した、陸上自衛隊情報保全隊の国民監視活動の概要は以下の通りです。
―陸自情報保全隊がデモや集会に身分を隠してもぐりこみ、日常的に国民の動向を監視し、膨大な個人情報を系統的に集めていた。
―2003年12月から04年3月までに作成された2種類、計11部、A4判166ページに及ぶ内部文書を入手した。
―文書は多数の個人名を記載。デモの行動の様子や参加者が特定できる写真が掲載されていた。
―陸自東北方面情報保全隊作成の文書「情報資料について(通知)」計5部は、医療費負担増、年金改悪、消費税増税などの反対運動といった、自衛隊とは無関係な運動まで詳細に記録していた。
―陸自情報保全隊本部作成の文書「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」計6部は、41都道府県、289の団体・個人によるイラク派兵反対の運動を記録していた。
―監視対象は、高校生から、映画監督、画家、写真家、ジャーナリスト、国会議員の発言や行動に及ぶなど広範。市町村議会の動向、マスメディアの取材活動、宗教団体の動きなども対象になっていた。
―運動や個人を一方的に色分けし、日本共産党などを示す「P」や、民主党および連合系労組などを示す「GL」といったアルファベットで分類していた。
―市民団体の街頭宣伝で、名乗っていない個人名を特定し肩書まで記載。イラク渡航歴のあるNGO関係者が日本に帰宅し埼玉県内の自宅にいるなど、居所を特定した記載もあった。