2012年2月29日(水)
主張
首相沖縄訪問
対米追随浮き彫りにしただけ
野田佳彦首相が就任から半年たって初めて沖縄県を訪問し、仲井真弘多知事らと会談しました。あらためて浮き彫りになったのは、米軍普天間基地(宜野湾市)の撤去を求める県民の声には耳を貸さず、普天間基地の「移設」を口実にした名護市辺野古への新基地建設をあくまでも「唯一有効な方法」と開き直る、県民無視の姿勢です。アメリカと合意した新基地建設を何が何でも押し付け、新基地がだめなら普天間基地が恒久化すると脅すのは、対米追随そのものです。県民を裏切りつづける民主党政権の姿勢はいよいよ明らかです。
新基地建設は実現できぬ
野田首相は仲井真知事との会談で、民主党がかつて普天間基地の「国外、県外」への移設を公約しながら、それを裏切ってアメリカと「県内移設」を再確認したことについて「迷惑をかけた」と謝罪してみせました。しかし、なぜ新基地建設が「唯一有効な方法」なのかについて、まったく説明することができません。自らの公約も県民の意向も踏みにじり、アメリカに約束した新基地建設だけを押し付ける言語道断な態度です。
新基地建設がなぜ「唯一有効な方法」なのか。沖縄県民は文字通り“島ぐるみ”で普天間基地の即時閉鎖・返還を要求し、「県内移設」のための新基地建設に反対しています。仲井真知事も野田首相に、「辺野古移設はものすごく時間がかかる」と新基地建設が実現困難であることを伝え、「県内移設」を断念するよう求めています。県民の立場に立てば新基地建設こそ実現不可能であり、「唯一有効な方法」でないのは明らかです。
野田首相が新基地建設を、米海兵隊を「抑止力」として沖縄に残すためと合理化しようとしたのは論外です。もともと米海兵隊はアメリカが海外で戦争するための“殴りこみ”部隊で、沖縄を守る「抑止力」などではありません。当のアメリカ自身が普天間基地の問題と沖縄にいる米海兵隊の移転問題を切り離し、グアムなどへの一部移転を先行させると発表したばかりです。「抑止力」論を持ち出しても、沖縄に基地を押し付ける理由付けにはなりません。
だいたい終戦から半世紀以上、沖縄の施政権返還からでも今年で40年になるのに、外国の軍隊が駐留するのを「抑止力だから」と当たり前のようにいうのは、「独立国」の首相として情けない態度です。日米軍事同盟=安保条約にもとづき米軍が基地を置き、沖縄を足場に世界中に「殴り込み」をかける態勢を整えていることこそ、沖縄と日本の安全を脅かしています。米海兵隊の駐留を当たり前のこととすますのではなく、「安保も基地もない」沖縄をこそ、政府は目指すべきです。
県民に「唯一」ではない
結局、野田首相が新基地建設を「唯一有効な方法」だといいはるのは、アメリカと交わした約束の実行以外、民主党政権には対策が思いつかないことを認めただけです。対米追随そのものです。
野田首相にとってはアメリカのご機嫌を損ねないことが「唯一」でも国民・県民にとってそれは通用しません。普天間基地の無条件撤去を求めて本腰を入れてアメリカと交渉することこそ、国民が政府に求める唯一の道です。野田首相がそれをやらない以上、いよいよ首相の資格がなくなります。