2012年1月28日(土)
「米国・財界中心」から転換を
代表質問 志位委員長がただす
「アメリカいいなり・財界中心」の政治から転換せよ―衆院本会議で27日、代表質問にたった日本共産党の志位和夫委員長。「二つの害悪」を断ち切り、新しい日本への転換を迫りました。
財界いいなり・「一体改革」
消費税増税三つの大問題
――首相は答えられず
ムダ遣いは続けたまま 社会保障は切り捨てばかり 経済も財政も共倒れになる
|
「大震災と原発事故で苦しんでいる最中に、なぜ増税か」。志位氏は、「税と社会保障の一体改革」の名による消費税増税について被災者の怨嗟(えんさ)の声を突きつけ、「胸の痛みさえないのか」と迫りました。
その上で、志位氏は消費税大増税について、(1)無駄遣いを続けながらの大増税、(2)社会保障の切り捨てメニューばかり、(3)国民生活に打撃を与え経済も財政も共倒れになるという三つの大問題を指摘しました。
このなかで、景気をどん底に突き落とした1997年の消費税5%への増税について、首相自身が野党時代の国会質疑で「もっともおろかで、もっとも無意味で、破壊的な経済政策」と酷評していた事実に言及。いま強行しようとしている総額16兆円、97年の負担増の1・8倍にのぼる大増税は、それと比べてもはるかに「破壊的な経済政策」だと述べ、「日本経済をどん底に突き落とし、財政破綻をいっそうひどくする道ではないか」とただしました。
首相は三つの大問題のいずれにもまともに答えられず、消費税増税は「どの内閣でも先送りできない課題。すべての国民に還元するものだ」などと繰り返すだけ。ムダと指摘された八ツ場(やんば)ダム、原発推進予算、次期戦闘機のいずれも合理化したうえ、社会保障の切り捨てを「重点化・効率化」だと強弁。経済への影響も「将来の不安を取り除き、人びとが安心して、消費や経済活動を行う基礎を築くもの」と逆さまに描きました。
|
日本共産党の改革案提案
三つの柱で財源をつくりだす
これに対し、志位氏は社会保障拡充と財政危機打開の財源をどうつくるか、日本共産党の対案を明確にしました。
(1)無駄遣いの一掃と富裕層・大企業優遇の不公平税制見直しにただちに取り組む、(2)社会保障の抜本的拡充には負担能力に応じた負担原則に立った税制改正によって財源を確保する、(3)それらと同時並行的に国民の暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」に前進し、内需主導の経済成長による税収増―という民主的改革案を提起しました。
志位氏は「財界に言われるままに、庶民の生活を踏みつけにする政治から、大企業・財界にもうけにふさわしい社会的責任と負担を求める政治への大転換がいまこそ必要だ」と追及しました。首相は法人税減税について「企業の国際競争力強化を通じて、雇用や国内投資を図る」と“財界いいなり”の姿勢をあらわにしました。
アメリカいいなり政治の焦点
志位氏は「アメリカいいなり政治にかかわる二つの熱い焦点」として、環太平洋連携協定(TPP)参加と、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)「移設」問題を取り上げ、「アメリカいいなりから抜け出す意思はないのか」と迫りましたが、野田首相は「アメリカいいなりとの指摘はあたらない」と開き直りました。
TPP
秘密交渉に参加するな
TPP問題では、昨年の臨時国会で志位氏が指摘した四つの大問題((1)復興への妨げ(2)食料自給率50%と両立しない(3)アメリカの対日要求がごり押しされる(4)アメリカの対日輸出戦略に取り込まれる)に何一つ答えられないまま、野田首相が参加方針を表明したことに強く抗議しました。
その上で、ニュージーランド政府の公式発表では、TPP参加交渉での各国提案や交渉文書を、協定発効後4年間も極秘扱いとする合意が行われていると追及。野田首相が約束した「情報収集と説明責任」「十分な国民的議論」は不可能だと指摘し、「交渉参加の表明は撤回すべき」だと求めました。
野田首相は、ニュージーランド政府の合意文書について「承知している」と認めながら、「外交交渉では当然」と開き直り、国民に目隠しをしたまま交渉参加を進める姿勢を示しました。
普天間問題
アセス強行に正当性なし 無条件撤去求め米国交渉を
普天間基地の「移設」問題で志位氏は、新基地建設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書を未明に県庁に持ち込む卑劣なやり方について、政府の方針に「正当性がないことを自ら示すもの」と指摘しました。さらに住民に深刻な影響を与える垂直離着陸機MV22オスプレイの配備を評価書提出まで隠したことをあげ、「とんでもない欠陥アセスだ」と批判しました。「県民の総意を無視する『辺野古移設』(新基地建設)の日米合意を白紙撤回し、普天間基地の無条件撤去を求めて米国と交渉すべきだ」と迫りました。
野田首相は、「(アセスは)適切に対応している」と反省もなく、「日米合意(辺野古新基地建設)を踏まえ、沖縄の理解を得る努力をする」と述べました。
志位氏はTPP問題も普天間問題も、「アメリカから『結果を出せ』といわれて始まったやみくもな暴走」だと強調。日米安保条約を廃棄し、対等・平等・友好の日米関係への抜本的転換を求めました。
大震災・原発問題
仮設・雇用・医療緊急措置を
全事業所支援・自治体応援せよ
東日本大震災の被災地では33万人超が避難生活を強いられています。志位氏が「被災者の命と健康を守るために、あらゆる手だてを」と述べ、住宅・医療・雇用の各分野で緊急の措置を求めたのに対し、首相は冷たい答弁に終始し、被災者の要求に背を向けました。
志位氏は仮設住宅の寒さ対策、医療・介護の負担減免の3月以降の継続を要求。12万人超の失業者に対し、安定した仕事と収入を保障するために失業給付の延長などを求めました。
また、「中小企業、自営業者の事業再開は雇用確保の最大のカギだ」として、被災事業所へのグループ補助や賃金補助を、すべての事業所を支援する仕組みへ抜本的に拡充するよう要求。被災企業支援に取り組む自治体の努力を「思い切って応援することこそ国の責任だ」と強調しました。
首相は、医療・介護の負担免除について、警戒区域などでは最長1年、その他の地域では、対象を限定して一定期間継続する方針を表明したものの、失業給付の期限切れは「きめ細かな就職支援をする」などと述べるだけで、緊急措置をとる姿勢は見せませんでした。
|
廃炉・除染・賠償に応えよ
「収束宣言」撤回を 再稼働は論外
原発事故対応について志位氏は、「収束宣言」の撤回や廃炉、県内全域・全県民を対象にした賠償、除染や18歳以下の医療費無料化など「オール福島」の要求を突きつけ、「この痛切な声にどう答えるのか」と迫りました。
首相は「オール福島」の声にこたえようとはせず、廃炉要求も「承知している」と述べるだけで「設置者である東電が適切に判断すべきもの」だなどと丸投げしました。
志位氏は「やらせ」を行った電力会社が実施し、「やらせ」を組織した保安院が審査したストレステストを「誰が信用するのか」と批判。「事故の究明がすべてのスタートの大前提」だとした首相答弁にてらしても「再稼働など論外だ」と迫りました。
首相は「事故原因は一定程度明らかになってきている」とし、「政治レベルでの総合的な判断を行う」と述べ、再稼働に道を開く姿勢も示しました。
衆院選挙制度問題
比例削減反対・抜本改革を
首相 民意切り捨て認めぬ異常答弁
志位氏は、民主党が消費税増税を口実に提出しようとしている衆院比例定数80削減の法案について追及しました。
小選挙区制は、大政党有利に民意をゆがめる害悪をもっていると指摘し、「中小の政党を支持する多様な民意をばっさり切り捨てる選挙制度が、民主主義と両立するのか」とただしました。
ところが、首相は「比例削減で民意を切り捨てるという認識に立っていない」と答弁。4割台の得票で7割の議席を獲得し、衆院選挙制度改革に関する各党協議会で、自民党も含めて民主党以外のすべての政党が民意をゆがめていると述べている事実さえ認めない異常な姿勢を示しました。
志位氏は比例定数削減に断固反対するとともに、小選挙区制の撤廃と比例代表中心の選挙制度への抜本改革を提起。「議会制民主主義を守るために、比例定数削減反対と民意が反映する抜本改革で、党派を超えて力を合わせることを呼びかける」と力を込めました。
そのうえで、「政治の特権にメスを入れる」というなら、国会議員1人あたり年4600万円にものぼる政党助成金にこそメスを入れるべきだと強調。民主党の収入の82・7%が政党助成金であり、「国民の税金に首までつかってぬくぬくとしている党の体質こそただすべきだ」と廃止を求めました。
首相は、指摘には答えられず、「政党助成金が憲法違反との認識には立っていない」と強弁。見直しについては「各党各会派でご議論いただきたい」としか答えませんでした。