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2012年1月25日(水)

「決断する政治」誰のため?

野田首相施政方針演説

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 24日に開会した第180回通常国会の施政方針演説で、野田佳彦首相は「重要な課題を先送りしない『決断する政治』」の姿勢を強調しました。何を決断し、誰のために実行しようというのか。その中身をみてみると―。


税と社会保障

自公路線を継続 経済奈落の底に

 「私が目指すものも同じです」。野田首相は、自公政権時代の麻生太郎首相(2009年当時)が「持続可能な社会保障制度を実現するには、給付に見合った負担が必要です」などと消費税大増税への決意を表明した施政方針演説の言葉を引いて、こう強調しました。その上で、消費税率を10%に引き上げる大増税案の協議に応じるよう自民・公明両党に呼びかけました。

 社会保障費抑制と消費税増税を同時に押し付けようとした自公政権の路線と、現在の民主党政権の路線が何の違いもないことを自ら告白した格好です。

 実際、「一体改革」の名でやろうとしているのは、年金額のとめどない削減、自己負担の引き上げによる医療・介護の受診・利用抑制など、自公政権が進めた社会保障切り捨ての「構造改革」路線にほかなりません。

 首相が唯一胸を張ったのは「子ども・子育て新システムの構築」です。しかしこれは、保育提供の公的責任を放棄し、親の自己責任に変える大改悪です。「現役世代の安全網を強化」するなどというのは国民を欺くものです。

 消費税増税と年金削減などを合わせると国民には16兆円もの負担増となります。「福島の再生」「経済の再生」の希望が開けるどころか、被災地復興に冷や水を浴びせ、日本の経済も財政も奈落に突き落とす道です。

 その一方で首相は「無駄削減」への「覚悟」をいいながら、八ツ場ダムの建設継続、在日米軍への「思いやり予算」、政党助成金などの巨額の無駄遣いには触れもしませんでした。無駄遣いは続けた上、自公の協力を得て、社会保障改悪と消費税増税の「一体改悪」に突き進むことは許されません。

議員定数

行政府トップが削減主張の異常

 消費税大増税を押し付ける口実に、衆院比例定数80削減を持ち出す野田政権。首相は、削減法案を「今国会に提出すべく民主党として準備している」と述べ、「リーダーシップを発揮する」とまで言い切りました。行政府の長である首相が立法府の議席削減を主張するというのは異常です。

 民主党以外の各党は、民意をゆがめる小選挙区制の害悪を認めており、多様な民意を反映させるため選挙制度の抜本改革が焦点となっています。比例削減はこの流れに逆らい、議会制民主主義そのものを壊す暴挙です。

 「政治家が範を示す」といいながら、政党を税金漬けにし、政治の劣化を招いている政党助成金(年間320億円)の廃止に言及しないのはごまかしです。

普天間・TPP

国民の怒り無視 米国従属の極み

 野田首相は、沖縄についてまず、「自由度の高い一括交付金」など振興策を表明。その上で米軍普天間基地の県内「移設」ノーの県民総意を踏みにじり、同県名護市辺野古への新基地建設に向けて全力で取り組むとしました。一括交付金を「アメ」として懐柔するというならとんでもないことです。

 新基地建設に向けた環境影響評価書の提出強行に続き、田中直紀防衛相の建設工事の年内着工発言などに対し、県民の怒りは高まる一方です。

 しかし、野田首相は、日米同盟は「アジア太平洋地域、そして世界の安定と繁栄のための公共財」で「深化・発展」させなければいけないとし、その一環として新基地を沖縄に押し付ける姿勢を示しました。

 野田首相は、日本の農林水産業をはじめ国の在り方まで変えてしまう環太平洋連携協定(TPP)参加について、「日米同盟を基軸」とし、関係国との協議を進めると表明。新基地建設もTPPもアメリカいいなりの極みです。軍事同盟という枠組みでしかアジア太平洋地域や世界を見ることができないのでは、「誇りある国」など望むべくもありません。

震災復興・原発

支援具体策なし 再稼働に道開く

 最重要課題となっている大震災・原発事故からの復旧・復興。野田首相は「がんばろう、日本」などと言うだけで、切実な被災者の願いにこたえる姿勢も具体策も見られませんでした。

 失業手当の期限切れが始まっている問題でも、具体的支援策もなし。雇用確保に不可欠な生(なり)業(わい)再建の遅れは放置したまま、「内外から新たな投資を呼び込む」と、大企業のもうけ確保を優先させる始末です。

 原発事故対応でも、全面賠償を求める被害者の叫びを無視して「公正で円滑な賠償」などの名で線引きを持ち込み、自治体まかせで進まない除染や住民の健康管理への具体的な手だてもありません。

 さらに、事故原因の究明もないまま「収束宣言」を出した「ステップ2」完了を強調し、「経済再生のためには、エネルギー政策の再構築が欠かせない」として、財界と電力業界いいなりに原発再稼働に道を開く姿勢をにじませました。

 「原子力への依存度を最小限に低減させる」と言いながら、再生可能エネルギーの普及・拡大の言葉もなく、「中長期的に」というのが大前提。これでは「原発ゼロ」を求める世論にこたえられません。


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