2011年11月29日(火)
主張
COP17
新たな枠組み合意の展望開け
温室効果ガスの排出削減に向けた新たな枠組みを議論するため、国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP17)が約190の国・地域が参加して南アフリカのダーバンで開幕しました。
来年は「地球サミット」から20年です。同サミットで採択された気候変動枠組み条約は、地球温暖化を人類が直面する課題に位置づけ、防止に向けた国際協力をうたいました。温暖化を防ぐには温室効果ガスの排出を大幅に削減しなければならず、そのための実効ある枠組みが不可欠です。
「空白」をつくらず
削減のための法的拘束力ある合意が京都議定書です。議定書の第1約束期間が来年末で終了することから、期限内に新たな合意が得られなければ、世界的な温暖化対策に「空白」が生じる事態になります。「空白」をつくらず、主要国が参加する効果的な合意の達成が必要です。拘束力ある排出削減目標に合意できるかどうか、今回の会議はぎりぎりのタイミングで開かれています。
2年前のCOP15では、産業革命以前からの気温上昇を「2度以内」に抑えると合意したものの、具体策では先進国と途上国とが対立し前進しませんでした。昨年のCOP16は協調して取り組むことを確認したものの、実質的な前進は今回に持ち越しました。
温暖化防止には、京都議定書から離脱した米国をはじめ、歴史的に温室効果ガスを大量に排出してきた先進国が率先して責任をはたすことが決定的です。同時に、米国を抜いて世界最大の排出国となった中国など、排出量を増やしている新興国もそれにふさわしい取り組みが求められます。「共通だが差異ある責任」の原則にたって、各国が狭い利害を超えて排出削減に取り組むことが重要です。主要国がこぞって参加する新たな枠組みの合意は困難でも、今回会議はそれに向けて実のある展望を開かねばなりません。
同時に、取り組みに「空白」を生まないためには、2013年以降の京都議定書第2約束期間の目標を設定することも必要です。途上国の多くが要求し、欧州連合(EU)も容認しているもので、現状では採択にいたる可能性のある唯一の措置です。
民主党政権は財界の主張を受け、すべての主要国が参加する枠組みづくりを絶対条件にし、第2約束期間の目標設定に反対してきました。組閣に先立って経団連を訪ね協力を要請した野田佳彦首相のもとで、日本政府が反対を強めることも予想されます。交渉の足を引っ張り「空白」をもたらしかねない主張で、孤立化の道です。
原発依存見直し
福島原発の重大事故を受けて、日本のエネルギー政策は原発からのすみやかな撤退が迫られています。従来の温暖化対策は原発依存を強めることを前提にしており、根本から見直さなければなりません。太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの一刻も早い本格的な転換が不可欠です。
大半の原発が停止しているなかで、財界は温室効果ガスを25%削減する政府目標の引き下げを要求しています。地球温暖化を防ぐ責任をはたす立場から、引き下げは許されません。いっそうの省エネとともに、再生可能エネルギーへの転換に力を尽くすべきです。