2011年11月24日(木)
崩れた“消費税でバラ色”宣伝
増税への理解を得るため!? 民主内、社会保障削減で珍論
「(民主)党執行部には『社会保障費に手をつけないまま、消費増税に進むのでは有権者の理解は得られない』との懸念も出てきた」(「日経」17日付)
消費税増税への理解を得るためには社会保障費を削る必要があるという、それこそ有権者が理解に苦しむような論理が、民主党議員や一部マスコミの間でまことしやかに語られています。
消費税増税は「社会保障のため」との増税論の建前はどこへいったのか。
自然増の抑制も
高齢者の増加などで当然増えていく社会保障費の「自然増」分まで、毎年毎年2200億円ずつ削り続けて「介護難民」「医療崩壊」をもたらしたのが自公政権でした。野党時代の民主党はこれを強く批判し、「『社会保障費2200億円削減』は行いません」と政権公約に明記しました。
ところがいまや、「(社会保障費の自然増は)聖域ではない。1兆円ずつの自然増というのは見直していかないといけない」(前原誠司民主党政調会長、20日)と、自然増抑制路線を公言するまでになっています。
社会保障を「仕分け」の標的にした行政刷新会議(22日)では、同党の玉木雄一郎衆院議員が“悲壮な決意”を語りました。「耳の痛い問題に目を背けて先送りする政治から脱却しないと日本は立ち直れない。社会保障という大きい割合を占めている予算に対して正面から切り込んでいかなきゃいけない」
小泉「構造改革」劇場の再演をみているかのようです。
露骨な公約違反
医療・介護の「再生」を掲げて期待を集めた民主党政権がここまで露骨に公約をひっくり返す根底には、消費税に財源を求める同党の姿勢があります。政府・与党の「社会保障と税の一体改革」成案(6月)は、無収入の人や子ども、低所得者からも徴収する消費税で、社会保障の公費全体をまかなっていく方針を決めました。
社会保障費は高齢化に伴って今後も伸びるため、この方針を守ると消費税率がとめどなく上がります。2025年には軽く20%を超える計算です。
「一体改革」を議論する民主党の「調査会」(16日)では、外来患者に医療費の定額負担を課す方針に異論が続出しました。ところが、「効率化」をやめれば10年代半ばに消費税率を11%や12%に上げることが必要になると反論が出て、まとまっていません。
“消費税増税で社会保障はよくなる”というごまかしのバラ色宣伝はすっかり破たんし、増税が膨らまないよう社会保障を削る努力も示さなければ、という逆立ちした論理に陥っているのです。財源をもっぱら消費税に頼る方針の当然の帰結です。消費税が社会保障「破壊税」としてしか作用しないことを早くも実証してみせています。
1995年と比べて日本の法人3税の税収は約10兆円落ち込み、所得税・住民税・相続税収なども合わせて約11兆円減っています。大企業と大金持ちへの過大な減税こそが「財源不足」の元凶です。脱却すべきはこれらを「聖域」扱いする政治です。 (杉本恒如)