2011年9月30日(金)「しんぶん赤旗」
生き永らえた命救えるのか
参院予算委 市田書記局長が追及
「血も涙もない」政治なのか―。29日の参院予算委員会で日本共産党の市田忠義書記局長は、東日本大震災で被災したすべての医療機関の再建を支援せよと迫りました。
市田氏 全壊病院を災害復旧の対象にせよ
首相 「単なる原状復旧でなく柔軟に対応」
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岩手、宮城、福島3県では300の病院が被災し、いまだ20病院で入院機能が回復していません。医科診療所は1159施設が被災し、79施設が受け入れ不可の状態です。
市田氏は、もともと医療過疎だった東北沿岸部で被災者が安心して住み続けるためには医療の復旧・復興が欠かせず、「すべての医療機関を国が応援するという立場が当然だ」と質問。野田佳彦首相は「医療全般がきちっと復旧・復興できるように国として責任を果たしていきたい」と答えました。
その上で市田氏は、全壊した医療機関が国の補助対象から事実上外されているという重大問題を追及しました。
国は2011年度第1次補正予算に医療機関への「災害復旧費補助金」を盛り込み、病院125件、医科診療所165件の申請が出されました。しかし全壊した医療機関は一つも含まれていません。
市田 全壊した医療機関の申請が1件もないのはなぜか。
小宮山洋子厚労相 (被災した)その場で再建することが条件になっている。
高台などに移転する場合を対象外とする答弁。市田氏は「橋が洪水で流された場合には災害復旧の対象になるのではないか」と厚労相答弁の不合理をただしました。前田武志国交相は、被害にあったもとの橋の場所を移す場合でも、木の橋を被災後にコンクリートの橋に強化する場合でも「対象になる」と答えました。
市田氏は「橋は対象なのに病院は事実上対象外だ」と批判。小宮山厚労相は「柔軟に使えるようにしていきたい」と答えざるをえなくなりました。野田首相も「単なる原状復旧でなく柔軟な対応、適切な対応をする」と述べました。
さらに市田氏は、全壊した医療機関が仮設の施設で再開する場合に国が仮設診療所しか支援していない問題を追及しました。
岩手県立高田病院(陸前高田市)の仮設診療所では入院機能がなく、毎日200人もの外来患者があるのに命を救えるのかと悲鳴が上がっています。
市田 重症化した患者は車で1時間半もかかる内陸部の病院に搬送しなければならない。二つ三つの病院を転々として亡くなったお年寄りもいる。(入院機能をもつ)仮設病院を認めて助成すべきだ。
厚労相 (災害復旧費補助金とはまったく別の)地域医療再生基金を、被災県が策定する医療の復興計画に(仮設病院が)盛り込まれる場合に使えるようにしたい。
市田氏は「復興計画を待っていられない。全然スピード感がない」と政府の対応を批判しました。
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市田氏 公的病院と民間で差をつけるな
厚労相「(補助金)使えるように考える。なければ新しい制度つくる」
公的医療機関には補助金が出るのに、圧倒的多数をしめる民間医療機関にはほとんど補助が出ない―。市田氏は「医療施設等災害復旧費補助金」について、もう一つの重大な問題を告発しました。
市田氏は「公立か民間か、病院か個人の診療所か、医科か歯科か産科かを問わず、みんな公共的、社会的役割を果たしてきた」と述べました。
市田 公的病院と民間とで差をつける必要がどこにあるのか。
厚労相 これまで中核的役割を担う公的病院、政策医療(救急など)を担う民間病院を(補助)対象としてきたが、地域の実情に応じてどのように使えるか考えていく。
「補助を検討するということか」と確認する市田氏。小宮山厚労相は「組み合わせなり、うまくいかなければ、新しい仕組みを考えるなりして応援していきたい」と同意しました。さらに「お住まいの方が困らないようにあらゆる知恵を使う」と答え、災害復旧費補助金を適用する方針を言明しました。
市田氏は、2億円も借金をして再建した宮城県気仙沼市の外科診療所長の話を紹介。「自己資金で再建したところも支援するのか」と確認すると、小宮山氏は「さかのぼって(補助を)出せるようにする」と表明しました。
市田氏は「『選択と集中・集約化』の名による医療構造改革のもと、東北3県は医療過疎が深刻化し、地震と津波の直撃で壊滅的打撃を受けた。それを事実上、放置してきた医療政策を転換することを強く求める」と質問を締めくくりました。
ところが、厚労省の官僚から耳打ちされた小宮山厚労相は慌てて、「先ほど申し上げたのは政策医療に関わる病院について、さかのぼってするということです」などと、前言を覆す答弁。市田氏は「さっきはそういっていない」と抗議し、「予算委員会の公式の答弁で、大臣が事前に通告していた質問に政策医療以外も助成すると言明したのだから、それを確認する」と述べました。
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