2011年9月25日(日)「しんぶん赤旗」

主張

揺らぐ世界経済

経済政策の転換迫られている


 景気の底が抜けそうだとの不安に各国が駆られています。国際通貨基金(IMF)は、欧・米・日の成長鈍化などをあげて「世界経済は危険な新局面にある」と強い警戒感を表しました。

 ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議とIMF・世界銀行総会は危機感を共有しながらも、具体策は個別努力にまかせた形です。G20本来の国際協調を生かすにも、対応の見直しが求められます。

金融規制を正面から

 3年前の「リーマン・ショック」は、投機の道具と化した金融が実体経済を振り回す逆立ちした「グローバル」経済の異常さをあらわにしました。世界経済のこうした異常を正すべき改革が進まないことが、危機の連鎖を招いた一つの要因です。そのもとで、各国財政は金融による攻撃にもろさをさらし、先進国の金融緩和は景気刺激効果がないだけでなく、商品市場をさらに投機化して、国民生活に負担となっています。

 欧州の懸念の的ギリシャは、欧州連合(EU)とIMFの支援にもかかわらず、破綻の危機を免れないでいます。デフォルト(債務不履行)になれば、ギリシャ国債を抱える欧州の銀行が次々に破綻するとの信用不安が広がっています。民間格付け会社の判断が事態を左右し、さらにはユーロの信認を揺さぶり、為替相場の混乱に拍車をかけています。金融規制の強化をあらためて正面から捉えなおす必要があります。

 財政再建を迫られたギリシャ政府は厳しい緊縮政策をとり、公務員削減や年金カット、増税などあらゆる面で国民負担を強めています。そのなかで失業率は16%にのぼり、自殺率が倍加したと米経済紙が伝えました。財政赤字の削減は必要でも、それを至上課題にして経済をさらに悪化させては、財政再建自体もおぼつきません。

 長期不況から抜け出し景気を回復させるには、家計を温めることこそ本道です。世界不況の震源地である米国ではいまなお失業率が9%台に高止まりし、30歳未満の青年層での失業率は第2次大戦後で最悪といわれます。オバマ政権は公共投資などによる大型雇用対策を打ち出し、高額所得者への増税で賄うとしています。「小さな政府」に固執する野党が議会下院で多数を占め、実現には困難が予想されますが、雇用対策に力を注ぐことは政府として当然です。

 国連貿易開発会議(UNCTAD)の『貿易開発報告2011年版』は、日欧米が「雇用と賃金が伸びない」なかで、「金融市場の信認回復」のために拙速に“財政再建”に走らないようにと警告しています。世界が直面する「主要なリスク」は、「内需を基礎にした維持可能で世界的に均衡のとれた成長をもたらすまでに賃金が増加しない」ことだとの指摘は正当であり、G20をはじめ各国がその指摘を受け止めるべきです。

日本経済を泥沼に

 野田佳彦首相は国連総会演説で、「財政健全化目標の達成に向けて着実に取り組みを進める」と「財政再建」を国際公約しました。財政再建のためとして消費税増税などによって国民生活を一段と疲弊させるのは、日本経済を泥沼に引きずり込む誤った処方箋です。日本でも内需主導の経済対策への転換が迫られています。





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp