2011年9月17日(土)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問 詳報


 16日の参院本会議で代表質問にたった日本共産党の市田忠義書記局長。被災者の実態と叫びに応えた質問と、浮かびあがってきた野田内閣の姿は―。


震災復興

安心できる住環境へ 事業所に直接支援を

写真

(写真)参院本会議で代表質問に立つ市田忠義書記局長=16日

 市田氏は、復旧・復興の目標は「被災者が安心してその地で住み続けることができるようにすること」なのに、実態は「住み慣れた土地を離れざるをえなくなりつつある」と指摘。安心できる住環境と仕事・収入を確保できる道を提供すべきだと迫りました。

 雇用確保に向け、事業再建を進めるためには、「二重ローン」解消とともに、事業所・店舗への直接支援がどうしても必要だと指摘。住宅再建支援金と同様の支援を求めました。

 野田佳彦首相は、「早期の事業再開は暮らしの再建、地域の雇用確保に重要だ」と述べながら、従来の仮設店舗の整備などを述べるにとどまりました。

 被災地の主要産業である水産業はどうか。市田氏は、漁業者は「海がある限り海で生きる」と強い意欲を持っており、漁船、漁具や冷蔵・冷凍施設などがあれば、「新たな生産と雇用が生まれる」と強調。第1次補正予算に盛り込まれた漁船や養殖施設の復旧支援事業は1円も支出されていないことを指摘し、直ちに執行するよう要求しました。また、生産・流通・加工をセットで再生するため、冷蔵施設や加工施設再建のための個別・直接支援を提起しました。

 野田首相は、補正予算の事業は着実に執行されているとし、「請求があれば補助金が支払われる」と述べるだけでした。

 農業支援の予算の執行も大きく遅れていることを指摘。津波被害を受けた農地は政府が買い上げ、塩抜きやほ場整備して農家に貸し付け、将来的には農家が買い戻せるようにするべきだと主張しました。

 野田首相は、「堤防の復旧、除塩を支援する」と述べるにとどまりました。

原発災害

線引きやめ全面賠償 業界にも負担求めよ

 原発事故で直面している課題は何か。市田氏は、第一に今後放射性物質を出さず廃炉まで数十年管理していくこと、第二にばく大な量の放射能で汚染された地域を徹底して除染し、安心して暮らしていけるようにしていくことだと強調。「人類がこれまで経験したことのない大事業だ。この認識と覚悟があるのか」とただしました。

 野田首相が所信表明で「忘れてはならないものがある」と高校生の言葉を紹介したことにふれ、「首相が『忘れてはならない』のは、誰があんな思いにさせたのか、『安全神話』にどっぷりとつかってきた歴代政府の原子力行政ではないか」と痛烈に批判。除染について国が責任を持つと言うのなら、年間線量20ミリシーベルト以上に限らず、すべての除染に国が責任を持つべきだと主張しました。

 野田首相は事故については、「安全神話にとらわれていた事実は謙虚に反省すべき」としながら、20ミリシーベルトで線引きした「緊急実施基本方針」にもとづいてとりくむと述べるだけでした。

 市田氏は賠償問題について、国と東電の責任で全面賠償することを要求。被害者に対しては線引きをしながら、東電は国から支援を受け、電力業界や原子炉メーカーをはじめ「原発利益共同体」の責任を免罪し、役員が高額報酬を受け取ることほど「モラルに反することはない」と怒りをこめました。

 野田首相は、東電には経営合理化と経費節減を求めているとし、原子炉メーカーなども被災者の宿舎や雇用の確保に協力していると擁護。「中長期的なエネルギー構成のあり方について検討していく」と述べるにとどまりました。

武器使用

明白な憲法9条違反 政府見解からも逸脱

 市田氏は、民主党の前原誠司政調会長が訪米し、PKO(国連平和維持活動)武器使用基準の緩和と武器輸出三原則の見直しを明言したことを取り上げ、「明らかな憲法9条違反であり従来の政府見解からも逸脱する」と批判しました。

 前原氏は、ワシントンで行った講演(7日)で、「自衛隊とともに行動する他国軍隊を急迫不正の侵害から防御できるようにする」と述べました。

 市田氏は、「自衛隊が他国の軍隊と一緒になって武力の行使をする道をこじ開けようとするもの」と指摘。「政権党の政調会長の発言で極めて重大であり、首相はこの発言を是認するのか」と迫りました。

 野田首相は、「武器使用権限のあり方については、憲法の枠内で引き続き検討することが必要」と答えました。





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