2011年9月16日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「復興増税」

財界の身勝手を受け入れるな


 政府税制調査会が検討している「復興増税」の案で、もっとも有力とされているのが所得税と法人税を中心にした増税案です。

 それによると所得税は、期間は未定ですが10年程度の間、税額に一定割合を上乗せする定率増税を実施します。

 法人税は実効税率(国と地方の法人課税の負担率、約40%)を5%引き下げた上で、国の法人税を1割程度(税率で3%)上乗せ「課税」します。しかも、その「課税」期間は、わずか3年に限定するといいます。

言葉だけの「分かち合い」

 法人税に1割「課税」といっても減税の範囲内であり、3年後には減税だけが残ります。中小企業のほとんどは赤字経営を余儀なくされており、減税の恩恵を受けられるのは大企業が中心です。

 日本共産党の志位和夫委員長が15日の衆院代表質問で指摘したように、大企業の負担増は1円もなく、所得税増税でサラリーマンと自営業者にだけ負担増を求めるという話になります。

 経団連は14日に発表した「税制改正に関する提言」で「(法人税の)純増税を行うことは絶対に容認できない」と表明しています。米倉弘昌経団連会長は12日の記者会見で「国民全体で負担を分かち合う観点から、法人が一定の我慢をすることも考えられる」とのべながら、「ただし、その期間は3年が限度である」と言いました。

 新たな負担増は絶対認めない、減税の範囲内の「課税」、その「一定の我慢」すら3年限り―。「負担を分かち合う」というのは、まったくの言葉だけにすぎません。

 志位氏は「こんな(財界の)身勝手を受け入れるつもりですか」「大企業に復興のための新たな負担を求める意思がありますか」と迫りました。野田佳彦首相は正面から答えようとはせず、復興財源のあり方にかかわる重要な問題について自らの姿勢を国民に明らかにしませんでした。

 大企業は内部留保を257兆円という空前の規模に膨らませ、資金の使い道に窮しています。他方で民間給与は最高時から30兆円、2008年から09年にかけても1人当たり年間24万円も減っています。大企業の内部留保は「国際競争力」を強めるという口実で不安定雇用を増やし、賃金を抑制し、下請け業者の単価を買いたたいてかさ上げしてきたものです。

 資金過剰の大企業に負担を求めるどころか減税し、所得が減って四苦八苦している国民に負担増を強いるのは本末転倒です。こんなやり方では被災者を含む国民の暮らしをいっそう冷え込ませ、復興を支えるべき日本経済にも重大な打撃を与えます。

ばらまきは中止する

 6月に民主党と自民、公明両党などが賛成して、大企業・大資産家に恩恵が集中する研究開発減税や証券優遇税制の延長法を成立させました。欧米では30%前後の株取引の譲渡益や配当にかかる税金が、日本ではわずか10%というばらまきを続けることには何の道理もありません。

 復興財源というなら、何よりも法人税減税を中止し、証券優遇税制など大企業・大資産家へのばらまきをやめることです。大企業に「復興国債」の引き受けを要請するなど、有り余る内部留保を役立てる方策を具体化すべきです。





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