2011年7月26日(火)「しんぶん赤旗」

主張

障害者の過労死認定

国は「独自の基準」で安全図れ


 心臓に障害を持つ労働者の過労死認定を求めた裁判で、最高裁が国の上告を退け、過労死と認めた高裁の判決が確定しました。

 裁判で争われたのは、心臓疾患の危険が増えるとされる時間外労働「1カ月45時間」という「平均的」労働者の労災認定基準をそのまま機械的に障害者に当てはめることが許されるかどうかでした。確定した判決は、障害者への労災適用では本人の障害の程度に即した基準で判断することを求めています。障害者が安心して働ける社会へ、国は対策を急ぐべきです。

個別の事情考慮すべき

 愛知県豊川市の家電量販店・マツヤデンキで働いていた小池勝則さん=当時(37)=が亡くなったのは2000年12月です。小池さんは身体障害者手帳で「日常生活活動が著しく制限される心機能障害3級」と認定されています。

 マツヤデンキは、小池さんを「障害者枠」で採用しました。しかし、健常者と同じ立ち仕事を一日中させ、残業や販売ノルマを課しました。小池さんが突然死したのは就労からわずか1カ月半後でした。

 小池さんの死は、明らかに「過労死」でした。しかし、妻の友子さんの訴えにたいして、労働基準監督署も、名古屋地裁も、それを認めませんでした。小池さんの死亡前1カ月の時間外労働は「33時間」とされ、厚生労働省が認定基準としている「45時間」より少ないというのがその理由です。

 これほどひどい話はありません。小池さんの主治医は就労前から「立ち仕事は難しい状況」と診断していました。午後3時ごろで仕事を終える、勤務の制限が必要な状態だったのです。会社は障害者を雇用することで助成金を受け取っているにもかかわらず、主治医や産業医の意見を聞くことすらせず、小池さんにとってあまりにも過重な労働を強いていました。

 名古屋高裁は昨年4月、小池さんを過労死と認める逆転判決を出しました。障害者の労災認定は、健常者の基準ではなく「当該労働者(の症状)が基準となる」というものでした。国は上告しましたが、最高裁はこれを退け、高裁の判決が確定しました。

 判決は、画期的な意味を持ちます。厚労省は労災認定基準について、表向きは「障害者であるかどうかを問わず、個別の実情に基づいて総合的に判断する」といいます。実際には、業務と発症の関連性について、時間外労働が月45時間以上なら「強まる」、80時間以上なら「強い」とする目安で線引きし、認定を拒むことが横行しています。判決はその非科学性を根本から問うものです。

安心して働ける社会へ

 厚労省は障害者雇用対策の基本方針で「障害の特性に配慮した労働時間の管理」を事業主に求めています。しかし、その実効性を確保する対策がありません。日本共産党は、障害者の働く権利を守り、安心を確保するために、障害者の労災認定の「独自の基準」を設けることを国に要求してきました。

 最高裁の決定を受け、友子さんは「障害の有無にかかわらず、だれもが安心して働ける社会に改善してほしい」とのべました。国はこの願いにこたえるべきです。現行の労災認定基準を抜本的に見直し、障害者への「配慮」を尽くし、だれもが安心して働けるルールを確立しなければなりません。





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