2011年7月23日(土)「しんぶん赤旗」
主張
PKO懇中間報告
海外派兵強化の企て許さない
外務、防衛両省など主要省庁の局長クラスが参加する政府の「PKOの在り方に関する懇談会」(座長・東祥三内閣府副大臣)が先ごろ、国連平和維持軍(PKF)への参加や武器使用権限の拡大などの検討が「必要」だとする「中間報告」を公表しました。
PKFを含む国連平和維持活動(PKO)への参加原則の見直しは「より積極的な国際平和協力を可能とする」と「中間報告」がのべているように、海外派兵の強化につながるものです。政府がこうした形で検討するのは異例であり、民主党政権の危険性を浮き彫りにしています。
武器使用権限の拡大
そもそも自衛隊が海外での武力行使に参加するのは憲法違反です。国連への協力であっても、憲法上「到底できぬ」と憲法制定議会で発議者が言明しています。政府が1992年にPKO協力法を制定したさい、PKO参加の条件として、紛争当事国の停戦合意、参加受け入れの同意、中立性、以上の原則のうちいずれかが崩れた場合の撤退、武器使用は要員等の生命防護に限る―との5原則をもりこんだのは、そうした憲法上の制約をごまかすためです。
そのPKO5原則をいまになって見直すのは、武力を行使するPKFへの参加や自衛隊以外の他国のPKO部隊の防護にふみだすことによって、米国などが日本に要求している海外派兵の強化・拡大にふみだすためです。
とりわけ武器使用権限の拡大は重大です。PKO協力法はもちろん、イラク派兵法や海賊対処法なども、日本の部隊の管理下に入った他国の要員を除けば、日本の要員の生命防護が基本です。これを見直して他国の部隊・要員防護を自衛隊の任務に加えることが「中間報告」の中心的内容です。
しかも日本の部隊・要員は攻撃を受けていないのに、他国の部隊が攻撃をうけている場所に駆けつけて他国の部隊・要員を防護できるように拡大するのが「中間報告」の狙いです。
米軍部隊をはじめ他国の部隊を守るために自衛隊が武力を行使するのは、集団的自衛権の行使そのものです。集団的自衛権の行使は憲法違反という従来の政府見解にてらしても、PKO懇談会の作業は許されないものです。
日本に他国部隊の防護を認めさせ自衛隊の武器使用権限を拡大させることは、米国の日本に対する長年の要求です。米国はイラク戦争で自衛隊が行った米軍への後方支援を評価しながらも、武力を行使して米軍を守り、米軍とともにたたかうことを自衛隊に求め続けています。憲法をふみにじって米国いいなりの結論を引き出そうとする政府の作業は、日本をいっそう危険な道に引き込むものであり、やめさせるしかありません。
憲法順守の義務守れ
枝野幸男官房長官は「中間報告」をとりまとめた懇談会で、今秋にも結論を出す考えを示しました。懇談会の座長である東内閣府副大臣は9日独立した南スーダンへの自衛隊派兵を求めたミギロ国連副事務総長に、「中間報告」をまとめたことを伝え、検討を約束しました。
事態が重大な局面を迎えているのは明らかです。政府は憲法の原則を守り、PKO参加原則の見直し作業を直ちに中止すべきです。