2011年7月18日(月)「しんぶん赤旗」
保育所の面積基準 35自治体引き下げの危険
東京都はすでに検討 各地での条例審議に向け運動重要
東京などの35自治体で保育所の面積基準が引き下げられる危険が高まっています。最低基準を地方自治体の条例任せにする「地域主権改革」一括法によるものです。(鎌塚由美)
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厚生労働省はこれまで「待機児童問題が深刻でかつ地価の高い地域」で面積基準の引き下げを可能にする方針を示していました。15日に明らかになった具体的基準では▽待機児童数が100人以上▽住宅地の公示価格の平均額が三大都市圏を上回る―自治体が対象(別項)。期間は2012年度から3年間です。
東京都は、国の動きを先取りし昨年12月から、都児童福祉審議会の専門部会で0、1歳児の面積基準を現在の1人当たり3・3平方メートル(ほふく室)から2・5平方メートルに引き下げることを検討してきました。
専門部会では特別区長会の委員らが「面積基準の緩和は子どもにしわ寄せがいく」と強く反対。引き下げの方向でとりまとめることができず、専門部会は審議会に賛否両論併記の報告書を提出(6月)しました。しかし都は2・5平方メートルに引き下げることに「了解が多数だった」として、条例に盛り込む姿勢を変えていません。
東京都豊島区の「椎名町ひまわり保育園」の飯田由美園長は、「これ以上、子どもを詰め込めば、寝る、食べる、遊ぶ場所は保障されなくなります」と語ります。
同園の0歳児クラスは、約50平方メートル(畳約30畳)の部屋に、遊ぶ、食事、寝るの各スペースを確保しています。豊島区は、区独自の上乗せで1人当たり5平方メートルを基準としており、2・5平方メートルになると、定員の2倍詰め込むことになります。
劣悪な基準
飯田園長はいいます。「0歳児は、月齢が違えば成長が違い、それぞれの成長にみあった保育スペースを確保する必要があります。畳1枚半(約2・5平方メートル)で、親子で寝る、遊ぶ、食べるという生活を想像してみてください。2倍も詰め込むなんて絶対に無理です」
面積基準は、戦後60年にわたり改善されず、厚労省の委託を受けた調査研究(2009年)も、基準引き下げについて「1人ひとりの子どもの発達に応じた保育をさらに困難とする」と指摘。「食寝分離」を保障するためには、2歳未満では1人あたり4・11平方メートル、2歳児以上で2・43平方メートルが必要と結論づけています。
「地方主権改革」一括法の来年度からの施行にむけて、各都道府県議会で条例が審議されることになります。
全国保育団体連絡会の実方伸子事務局長は、「私たちの地域の子どもたちにはこういう基準が必要だと自分たちの求める条例を各議会に向けて要求していくことが重要です」と強調します。
実方さんは、認定基準を各都道府県の条例で決めた認定こども園(2006年導入)のときの経験をあげ、基準は各県によって違ったものの、部分的には国の指針を上回る基準をつくった例がたくさんあると指摘。調理室の設置を「原則として」ではなく必置とした新潟県や、3歳児の職員配置基準を国基準より引き上げた高知県などの例をあげます。
基準引き下げを許さない各地での運動が重要になっています。
面積基準緩和対象自治体
【東京都】中央、港、文京、墨田、江東、大田、世田谷、中野、豊島、北、板橋、練馬、足立、葛飾、江戸川の各区、立川、三鷹、府中、調布、小平、東村山、東久留米、多摩、西東京の各市
【神奈川県】横浜、川崎、藤沢、茅ケ崎、大和の各市
【埼玉県】さいたま、川口の各市
【千葉県】市川市
【京都府】京都市
【大阪府】大阪市
【兵庫県】西宮市
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