2011年7月12日(火)「しんぶん赤旗」

主張

防衛省研究会報告

「死の商人」国への危険な提言


 防衛省の「防衛生産・技術基盤研究会」(座長=白石隆・政策研究大学院大学学長)が6日公表した「中間報告」は、「武器輸出三原則」を突き崩し、武器輸出の自由化に道を開く危険な提言そのものです。

 昨年12月「防衛計画の大綱」の政府決定のさい、国民の反発から除外された「武器輸出三原則の見直し」を防衛省の研究会が再びもちだしたのは、世界で軍事的な支配を強めたい米国と世界への武器輸出で大もうけしたい日本の財界・兵器産業への利益奉仕をむきだしにしたものです。

狙いは武器輸出自由化

 菅直人政権は6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2=外交軍事担当閣僚協議)で、日米が共同開発している弾道弾迎撃用ミサイル「SM3ブロック2A」を米国経由で米国が認める第三国に移転することに合意しました。米国向けから米国経由の第三国向けにまで拡大したこと自体、武器輸出を禁じた「武器輸出三原則」に大穴をあける暴挙です。対米武器輸出を「武器輸出三原則」の「例外」だといって認めてきた自公政権以上に民主党政権が危険だということを示したものです。

 防衛生産と技術基盤の戦略を策定するために設けられた防衛省内の研究会「中間報告」が米国経由の第三国移転にとどまらず、日本の兵器産業を国際共同開発・生産に参加させる方向付けをしたのは重大です。米国が主導し英国など10カ国あまりで進めている次世代戦闘機のF35の共同開発・生産などに参加することによって、日本の兵器産業が武器を安上がりに生産し、それを共同開発国や第三国に売ることで大もうけさせようとしているのは明白です。経団連防衛生産委員会はそのための対米調査を進めています。

 「中間報告」はライセンス生産品の輸出や「平和構築」「人道目的」を口実にした武器輸出を「行えるよう、武器輸出三原則の見直しを行うことが必要」とものべています。武器輸出の全面自由化の企てです。過去の侵略戦争の反省の上にたち、日本の武器で他国民の命を奪わないという国民の願いをこめた「武器輸出三原則」をつきくずすなど、絶対に許されません。

 武器輸出の自由化は、米国の軍事支配を支えるとともに、日本の武器で多くの他国民を殺傷することを意味します。米国などが売った武器で紛争当事国同士が争い、罪のない人々が犠牲になっている幾多の事例を見れば明らかです。大もうけのために日本を「死の商人」国家に変えようという日本財界・兵器産業の身勝手で無節操な要求に応える「中間報告」の提言は、断じて認めるわけにはいきません。

禁輸原則厳守でこそ

 戦争を放棄し、世界の平和を願う憲法をもつ日本は、「国際紛争の助長を回避」する国であり続けるべきです。「防衛生産・技術研究会」は来年2月に最終報告をだす予定です。研究会が「武器輸出三原則の見直し」を結論付けるなら国民の平和の願いに背を向けることにしかなりません。日本は武器輸出にふみだして国際社会の信頼を失う「亡国」の道を進むべきではありません。

 憲法の平和原則にもとづき定着している「武器輸出三原則」を踏みにじる一切の策動を許さないことが重要です。





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