2011年7月1日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「一体改革」成案決定

すべては消費税増税のためか


 民主党政権が社会保障と税の「一体改革」の成案を決定しました。原案では消費税を「2015年度」までに10%まで引き上げるとしていたところを、「10年代半ば」と「修正」しました。

 迷走を重ねた上で決着した「修正」はほとんど原案と同じです。他方で成案は法人税率の引き下げを明記しています。

消費税増税の具体化

 与謝野馨一体改革担当相は増税幅と時期を「書くために膨大な作業をしてきた」と事前の記者会見でのべました。根幹の「修正」は認めないという趣旨ですが、「一体改革」の最大の目的が初めから消費税増税の具体化にあったことを告白した発言でもあります。

 経団連の米倉弘昌会長は「(一体改革の)大きな枠組みについては経団連の考えと一致するものとして評価している」と6月27日の講演で語っています。消費税の増税は財界の長年の要求です。

 いつも減税を求める財界が消費税では増税を要求しています。力の強い大企業にとって消費税はすべて価格に転嫁して実質的に負担を逃れられる有利な税金だからです。反対に大半の中小企業は消費税を価格に転嫁できずに自腹を切って納税し、消費者はもともと転嫁のしようがありません。

 「一体改革」成案は、消費税は「あらゆる世代が広く公平に分かち合う」税金だから社会保障の財源にふさわしいと説明します。過去最大の余剰資金を抱える大企業が負担を免れ、億単位の報酬を取る大企業役員らには羽より軽く、低所得者や中小企業にずしりと重い消費税は最も不公平な税金です。社会保障にふさわしいどころか、社会保障の所得再分配の役割を破壊する税金です。

 成案は「経済状況の好転」を増税の「条件」としました。1997年には2%の消費税増税で、好転していた日本経済が大不況に陥りました。どんなに経済状況を見極めたとしても消費税増税そのものが深刻な景気悪化を招く大もとです。それを避けるには消費税増税をやめる以外にありません。

 消費税増税への党内からの異論に、野田佳彦財務相は国際通貨基金(IMF)の提言を引き合いに出して、世界は日本に消費税増税を期待していると反論しました。

 消費税増税は東日本大震災の被災者にも重い負担になります。復興と日本経済の安定よりも国際金融投資家の代弁者であるIMFの「期待」を優先する姿勢は完全な本末転倒です。IMFは先月、日本に15%への消費税増税を求める提言を発表しました。国内の為替市場関係者からは「余計なお世話だ」という批判が多かったと伝えられています。本来なら日本の財務大臣こそIMFに「余計なお世話だ」と言うべきです。

国民の立場に立って

 医療・介護や年金、生活保護の給付削減など社会保障を抑制する一方で消費税を増税し、大企業には減税する―。民主党政権のやり方は、自公政権の「構造改革」路線との「一体化」をますます鮮明にしています。

 大企業の手元資金は52兆円を超えて過去最大に膨らみ、利益も急回復しています。軍事費など不要不急の予算にメスを入れ、大企業や大金持ちへの行き過ぎた減税を是正するなど国民の立場に立った財源策を真剣に追求すべきです。





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