2011年6月18日(土)「しんぶん赤旗」
防衛省パンフ 米海兵隊駐留「正当化」
沖縄県の質問に回答不能
防衛省は5月以降、沖縄県への米海兵隊駐留を正当化する『在日米軍・海兵隊の意義及び役割』と題した20ページの小冊子を同県内で大量配布しています。
21日に開かれる日米安保協議委員会(2プラス2)で、米海兵隊普天間基地に代わる名護市辺野古への新基地建設の形状(V字)を決定するにあたっての“地ならし”とみられます。しかし、冊子の説明はずさんで、とうてい理解が得られるものではありません。
“紛争地に近い”
もっとも首をかしげるのは、「沖縄は、米本土やハワイ、グアムなどに比べて、…朝鮮半島や台湾海峡といった潜在的紛争地域に近い(近すぎない)」という記述です。
冊子は「部隊防護上、近すぎないことが重要」としていますが、中国の長距離攻撃能力の向上により、「部隊防護」上、沖縄は不適切とする見解も少なくありません。
では、どこが「近すぎる」のか。日本本土を指しているのなら、本土の米軍基地はすべて「近すぎ」て不適切になります。
また、冊子は中国が「第一列島線」「第二列島線」を設定して軍事活動を強めていると説明していますが、沖縄列島はこの「第一列島線」上にあります。(図)
現実性薄い想定
仮に沖縄の「地政学的」優位性を“証明”しても、そこに海兵隊が駐留する意義は別の説明が必要です。
冊子は、(1)島嶼(とうしょ)での上陸作戦(2)日本周辺での紛争で在外邦人を含む民間人の救出活動(3)東日本大震災での人道支援・災害救助―などを挙げています。
(1)について冊子は尖閣諸島や与那国島の占領を示していますが、「国際的な批判を受ける上、全面戦争に発展する恐れのある離島占領というリスクを中国が取るとは考えられない」(柳沢協二元内閣官房副長官補、「琉球新報」5月28日付)との指摘がなされているように、きわめて現実性の乏しい想定です。
(2)(3)については、沖縄でなければならないという説明にはまったくなっていません。とくに(3)では、海兵隊は訓練先の東南アジアから被災地に直行しており、沖縄駐留に特別な意味は見いだせません。
鳩山前政権は、普天間基地の「移設」先として県外四十数カ所を検討しました。これについて冊子は、「(普天間基地所属の)ヘリ部隊は、支援する(沖縄の)地上戦闘部隊から一定の距離以上に離れると運用に支障を来す」と説明しています。
沖縄県は1日付で冊子に対する質問を出し、「当該部隊とヘリ部隊を一緒に移駐させれば県外移設が可能ではないか」と指摘していますが、17日現在で防衛省からの回答はありません。(竹下 岳)
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