2011年6月16日(木)「しんぶん赤旗」

発症まれではない

外傷原因の脳脊髄液減少症

厚労省研究班報告


 頭痛やめまいなどの症状を引き起こす脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する厚生労働省の研究班(代表・嘉山孝正国立がん研究センター理事長)はこのほど中間報告書をまとめました。「交通事故などの外傷が髄液漏れの契機になるのは、決してまれではないことが明らかになった」としています。


 医療現場では、外傷が原因になっている脳脊髄液減少症の症例が多く報告されていますが、国の研究で公式に言及されたのは初めて。患者団体からは、「何らかの衝撃で髄液が漏れることはあり得ないとする医学会のこれまでの通説を覆す結論で、この発表を機にこの病の存在や認識が大きく転換した」などの声があがっています。

 同研究班は「座ったり立ったりすると頭痛が始まったり、ひどくなる」患者100人を分析し、16人について「髄液もれ」が「確実」、17人が「疑いあり」、と判定しました。

 確実例の発症原因は外傷5例、腰への注射1例、重労働1例、原因不明9例でした。外傷5例の内訳は、交通事故2例、交通事故以外の頭頸(とうけい)部外傷2例、転倒(尻もち)1例。研究班は100人中16人という数は「決して低くない頻度」で、「交通事故を含む外傷が5例に認められ、外傷が契機となるのは決してまれではない」としました。

 研究では、脊髄をおおう硬膜の外のすきまに本人の血液を注入し、髄液の漏れを防ぐブラッドパッチという治療法の有効性も確認しました。

 これまで交通事故が原因で発症した場合、保険会社はこの病気が保険適用でない以上こんな病気は存在しないと主張して治療費の支払いを拒否するなどし、訴訟で争われてきました。

 報告書は、各種画像に関する判定基準(案)、診断のフローチャート(案)を提示。研究班は今後、症例を250まで集め、患者の長年の願いである治療への保険適用の前提になる診断基準や、治療ガイドラインの策定を進めます。





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