2011年6月12日(日)「しんぶん赤旗」

主張

国公法弾圧事件

違憲無罪で最高裁の真価示せ


 休日に、職務とは無関係に、政党のビラを配布した当たり前の正当な行為を、「犯罪」にでっち上げた事件の裁判が重要な局面です。

 国公法弾圧堀越事件で、弁護団が検察の上告趣意書に全面的に反論する答弁書を最高裁に提出しました。世田谷国公法弾圧事件と合わせ、最高裁で争われている二つの弾圧事件で、双方の主張が出そろい、審理が本格化します。広く公務員の政治的行為を禁止している国家公務員法、人事院規則が憲法違反であることを明確に認め、無罪の判断をすることが「憲法の番人」たる最高裁判所の責務です。

「化石」の判例見直せ

 東京高裁は、二つの事件でそれぞれ正反対の判決を出しました。

 厚労省職員だった宇治橋眞一氏が起訴された世田谷事件では、公務員の政治活動の一律・全面的な禁止を「合憲」とした過去の最高裁の判例に依拠して、ビラ配布弾圧に手を貸す有罪判決を出しました。社会保険事務所職員だった堀越明男氏の事件では、判例には「現在においては、いささか疑問がある」として、具体的にこのビラの配布行為が行政の中立性を侵す危険性がないことを評価し、刑罰の対象とすることは憲法違反だと画期的な無罪判決を出しました。

 ビラの配布は、だれにとっても最も気軽な意見表明の方法であり、その自由を守らなければなりません。憲法21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めています。憲法施行から5カ月後の1947年10月に公布された国家公務員法に、刑罰で政治活動を規制する規定はありませんでした。

 逆流を持ち込んだのは、日本を占領していたマッカーサー司令部でした。当時の国家公務員労働者の運動の高揚にたいして48年7月、日本政府に国公法の全面的な改悪を指示し、政治活動禁止もここで押し付けられました。もともと憲法とは相いれない規定です。

 違憲状態の国公法は、早期に改廃、是正されるべきものでした。ところが最高裁判所は74年の「猿払(さるふつ)事件」の判決で、国公法の政治活動禁止を「合憲」とする誤った憲法判断をし、これが判例とされました。この判決は専門家からも厳しく批判され、国公法の政治活動規制で起訴された事件は、その後30年も例がありませんでした。

 今回の二つの弾圧事件は、この「化石」のような判例を金科玉条にして、公安警察が、国公法を現代のビラ配布弾圧の武器として生き返らせようとした事件でした。

 検察の主張は「国公法の合憲性は猿払事件判決で決定ずみ」というもので、最高裁が判例の見直しをできるはずはないと高をくくった態度です。弁護団は、猿払最高裁判決を正面から見直し、違憲無罪判決を出すよう求めています。まさに、違憲審査を司(つかさど)る最高裁の真価が問われています。

大法廷で憲法判断を

 二つの事件は、裁判官5人で構成する最高裁第2小法廷で取り扱われています。言論表現の自由という憲法上の大問題が争われているのですから、全裁判官で構成する大法廷への回付が必要です。

 日本の異常な言論弾圧は、国際人権(自由権)規約委員会からも厳しく批判されています。ものいえぬ息苦しい国でなく、現代の人権感覚にふさわしい法制度へ、大きな世論を広げるときです。





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