2011年5月26日(木)「しんぶん赤旗」

薬害イレッサ学会声明 下書き問題

「介入」決めた局長らに訓告

厚労省報告


 肺がん治療薬イレッサ薬害訴訟で、東京、大阪両地裁の和解勧告を批判する声明文案を厚生労働省が作成し日本医学会に提供していた問題で、小林正夫厚労政務官は24日、調査報告書を公表しました。同省医薬食品局が学会に声明を要請する方針を決めた上で、同局室長らが日本医学会を含む6学会に働き掛け、うち3学会に文案を渡すなど組織ぐるみで行ったことを明らかにしました。

 小林政務官は「見解公表の要請は通常職務の範囲内」と強弁。「文案提供は学会の意思決定に介入したことになり行き過ぎ」だったとするにとどまりました。細川律夫厚労相は医薬食品局長や同局室長ら4人を訓告、阿曽沼慎司事務次官ら4人を厳重注意としました。

 調査報告書によると、1月の和解勧告を受け、医薬食品局長が開いた会議で、学会に見解を要請する方針を決めました。室長は勧告を批判する文案を作成。同局審議官とともに日本医学会の高久史麿会長らに渡し、見解の公表を求めました。阿曽沼事務次官の指示で職員が、ある学会に見解の公表時期を問い合わせたこともありました。

 報告書は「学会にもともとあった意見が公表されたにすぎず、不当な圧力があったとまでは断定できない」と結論付け、局長らには文案の提供は知らされていなかったとしました。

 6学会のうち3学会は1月下旬、相次いで声明を出し、高久会長も見解を発表。同会長が「販売されるべきものではない医薬品により発生した過去の薬害とは異なる」とした部分は、同省の文案通りの表現が使われていました。

 国は声明が公表された直後に和解勧告を拒否。2月の大阪地裁判決は国への請求を棄却、3月の東京地裁判決は国の賠償責任を認めました。


反省なく再調査が必要

原告・弁護団声明

 薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団は24日、厚生労働省「イレッサ問題検証チーム」(主査・小林正夫厚生労働政務官)が同日「調査報告書」を公表したことで声明を出しました。

 声明は、「厚労省が国民全体の利益を守るべき公共の立場にあるという視点が欠落している」と批判。「本件訴訟があたかもがん患者全体の利益に反するような世論誘導を行い、被害者である原告に二重の苦しみを与えたことに対する反省は全くみられない」と抗議して、徹底した情報公開と再調査を求めています。

 (1)調査対象の実名公表(2)原資料の公表(3)各学会の意思形成過程や厚労省の働きかけの具体的内容の調査・公表(4)被告アストラゼネカと厚労省がどのような関係を持っていたのか―の4点について再調査と公表を求めています。





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