2011年5月24日(火)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 九州の炭鉱町で苦境に負けず明るく生きる在日の4兄妹を描いた映画「にあんちゃん」(1959年、今村昌平監督)。両親を亡くし、長兄として一家を支えた安本喜一役で、ブルーリボン主演男優賞に輝いたのが長門裕之さんでした▼映画や舞台での名演技とともに、テレビでも活躍。赤いシリーズや池中玄太80キロといった人気ドラマで存在感を発揮しました。あのぎょろっとした目線の強さと、人懐こい笑顔。役者一家の長男に生まれながら、どこか庶民的な感覚を身にまとっていました▼後年は、認知症を患った妻・南田洋子さんとの老老介護が有名に。一昨年、その南田さんが先に旅立った際に「洋子を介護することで、ぼくの人生をもう一度、よみがえらせてくれた」と涙ながらにコメントしていました▼介護のことは本紙日曜版(2008年10月19日号)でも語っています。「寝るときから起きるときまで、全部、おれが介護しているってことに、ものすごく充足感を感じるんです」▼一方で、後期高齢者医療制度には怒りの声をあげていました。「後期なんて言われると頭に来るんだよ」。お年寄りを差別して重い負担をかける制度を「大きな災害」と批判しています▼医療・介護の改革を公約しながら、民主党政権は今と変わらない制度を取り入れようとしています。しかも、国民に新たな負担を押しつけて。これでは、妻の介護を通して人間の生き方を問いかけて旅立った“おしどり夫婦”も、きっと嘆いていることでしょう。





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